topimage

    2017-04

    スポンサーサイト - --.--.-- --

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    野田新内閣高支持率の「なぜ?」 - 2011.09.03 Sat

    野田佳彦内閣が成立して最初の内閣支持率調査の結果が出ました。92日、3日の共同通信世論調査によると、野田内閣の支持率はなんと62.8%です。野田首相自身は829日に民主党代表に選出された直後の演説で「私が首相になっても支持率は上がらないだろう」といっていましたから、本人の言を裏切る超高率です。野田さんにとってはうれしい「なぜだ?」のはずですが、ご本人にとっても、国民にとっても、これはきちんと検討してみる必要があります。
     
    ● ドジョウの効用は「癒し」
     
    昨日のテレビ朝日「スーパーJチャンネル」で私は「どうも野田氏の代表選出以来、世間に何となく『癒し』の感情がみなぎってきている」と述べました。おごりたかぶらない人格、自衛官の息子として生まれ、自助の精神で叩き上げてきたキャリア、わかりやすい演説内容に自らを「ドジョウ」に例えるユーモアなど。「世間知らずの金持ちのぼんぼんの鳩山由紀夫元首相」「無策、後手後手なのに『おれが、おれが』だけが鼻についた菅直人前首相」に苦しめられた国民は、野田首相のキャラクターに癒されたのではないかと感じたからです。高支持率は鳩山政権、菅政権への絶望の裏返しといえます。とりわけ、菅直人氏は、この数字を直視して、彼の好きな単語を使えば「しっかりと」「きちんと」自らの不徳を「総括」してほしいものです。
     
    ● 高支持率は「期待」の表れ
     
    就任直後の高支持率といえば、安倍晋三元首相も、鳩山元首相、菅前首相もそうでした。彼らの高支持率は根拠不明の「人気」でした。末路はご承知の通りです。野田首相は総理大臣としてはまだ何もしていません。高支持率は成果への評価ではなく、まったく定かでない「これからへの期待」でしかありません。ですが、ここで重要なのは野田首相の高支持率は、「もう後がない」「この難局をなんとかしてほしい」という国民のほんとうに切実なギリギリの期待のあらわれだということです。
     
    ●政党支持率の逆転も「野田効果」
     
    この世論調査では政党支持率も民主党が27.2%で、自民党の23.6%を上回りました。久しぶりの逆転です。この間自民党の支持率が民主党を上回っていたのは、民主党の失点の裏返しだったことが明らかになりました。民主党も、今回の数字は、実績が評価されたのではなく、「野田効果」にすぎないことを肝に銘ずべきです。野田氏への期待とは比べるべくもありません。自民党も民主党も態勢を立て直す必要があります。
     
     ● 臨時国会早期召集で施政方針を明確に
     
    野田首相がこれまでに表現された通りのキャラクターなら、この高支持率が、うつろいやすいものであることは重々理解していることでしょう。この数字は野田首相にとって、もっとも有利な環境で叩き出されたものですから。問題はこれからです。そして、その見通しはまったく未知数です。野田首相は国会での施政方針演説すらまだ行っていません。民主党を政策面で一致させて、国民に明らかにしたうえで真摯に野党との協議にのぞみ、実績を積んでいかなくてはなりません。いずれも「坂道を雪玉を転がしながら登る(野田首相)」ような難行です。姿勢方針演説はその第一歩です。それなのに、輿石東幹事長以下の民主党新執行部は、野党が要求する施政方針演説のための臨時国会早期召集をいやがっていると伝えられます(4日付朝日新聞朝刊)。民主党の考えている10月召集では、9月がまるまる「政治空白の継続」になってしまいます。国会の召集に消極的なようでは、せっかくの高支持率もしぼみかねません。 



    ドジョウは龍になれるか - 2011.09.02 Fri

    第一次野田佳彦内閣の閣僚、党役員人事が決まりました。鳩山由紀夫、菅直人と2代続いた民主党政権の混乱の後に出てきた野田新首相は、その風貌に「ドジョウ」を自称していることが相まって、何か一種の「癒し効果」をもたらしているようです。2日午前に行われた藤村修官房長官による閣僚名簿発表の記者会見では、内閣記者会の記者たちも、前2代の政権との対決姿勢が陰をひそめ、「模様見」を底流とした穏やかな姿勢でした。
     
    ● 挙党一致の責任を負わされた輿石幹事長
     
    先月29日の逆転勝利から4日後の野田内閣の船出。「挙党一致」を掲げて野田新体制を強く牽制する小沢一郎元代表、鳩山由紀夫元首相の小鳩グループから輿石東参院議員会長を幹事長に起用したのは、党の実権を小鳩グループに譲り渡した譲歩と見ることもできますが、一方で、「挙党一致」を実現する責任を輿石幹事長に担わせたことでもあります。これまで、輿石氏らにとって「公正な党運営」とは、反小鳩グループの主張に顧慮せず小鳩グループの利益を通すことでしたが、幹事長となっては、反小鳩グループの主張を無視することはできなくなります。今後の党運営は輿石氏にとって政治家としての品格を問われるストレステストです。輿石氏はこれまで国民の評価の矢面に立つことはありませんでした。しかし、世論調査の趨勢を見ると、国民にとっての民主党の公正な党運営とは、「小沢氏排除」を是とするものです。もし輿石氏がこの世論に露骨に抗する動きを見せれば、輿石氏は国民に直接批判されることになります。輿石氏が世論に配慮すれば、野田首相にとって輿石氏は小鳩グループからの防波堤になりえます。
     
    ● 与野党協力の責任も小鳩系に
     
    その他の党人事では、平野博文元官房長官の国対委員長起用が注目されます。野田首相は、菅政権時代の「三党合意」を守ることを天下に約束しました。平野国対委員長は、「三党合意」を守らないこともありうるとした小鳩グループの幹部です。その平野氏を国会での与野党交渉の責任者にしたことも、小鳩グループの動きを封じる一手です。野党に信頼されない国対委員長となっては平野氏の政治家としての将来にもかかわります。
     
    ●民主党第一世代は一丁上がり?
     
    内閣人事では、玄葉光一郎外相、安住淳財務相の起用が目を引きます。代表選挙での野田氏勝利に貢献したことで、「論功行賞」とされますが、なかなかどうして、民主党の将来、そして来るべき政界再編を見通した人事ともいえます。今回の政府、党人事では、小沢、鳩山、菅のトロイカ、そして岡田克也前幹事長、仙谷由元官房長官という民主党第一世代の姿が消えました。挙党一致の旗印の下で第一世代を一丁上がりにしたともいえます。野田首相をはじめ第二世代の時代に舞台が回ったのです。国民の間に漂う安堵感はこれとも関係あるかもしれません。鳩山・菅2代の政権、そして第一世代の人々は、それほどまでに政権交代への国民の期待を裏切ってきたのです。
     
    ●民主党に求められる政策面での挙党一致
     
    世間では「派閥均衡人事」「目玉のない人事」という評価がもっぱらですが、私は「ドジョウはなかなかやるな」という感想です。以前のブログで、「新政権は『ありもの』の中から」と書きました。その「ありもの」の中から、それなりのできの内閣が誕生しました。あとはそれが、どう機能するかです。中国の言い伝えでは、鯉は龍門という難所を越えて龍に変身するそうです。ドジョウが龍になるための難関は挙党一致の政府、党人事だけではありません。財政経済危機、大震災、原発事故という戦後最大の危機への対応です。野党との協力以前に与党民主党自身が内部で政策を一本化しなければ、野党との協議も始まりません。しかし、外交、財政経済政策から社会保障政策にいたるまで、民主党の内部の対立は党としての一体性を疑わせるまでに高じています。野田政権は民主党に与えられた最後の機会です。挙党一致を派閥均衡人事だけではではなく、政策面で実現できなくては、ドジョウはドジョウのままで終わってしまうでしょう。また、それは民主党の終焉をも意味するかもしれません。 



    300議席の呪縛 - 2011.08.27 Sat

     日本記者クラブで27日午後行われた、民主党代表選挙の立候補者5人による共同記者会見に出てきました。同日告示、29日投票というあわただしい日程です。政策論争を深めることができないという批判がある中で、5候補がそろって政策を競う数少ない機会でしたから。勝ち負けを占えば、第一回投票で決まることはなさそうです。第一回投票の1位と2位で争われる決選投票に残るのは、まず海江田万里経済産業相、それに前原誠司前外相、野田佳彦財務相,、鹿野道彦農林水産相の3人のうちいずれかということになりそうです。

    民主党代表選 

    2時間にわたった記者会見で、すべての候補が重要課題としてあげたのは①大震災、原発事故からの復興②経済成長と財政再建でした。現在の日本が抱える病は、「生活習慣病」としての経済不振、過大な社会保障負担と巨額の財政赤字、それに「急性の病気」としての大震災、原発事故ですから、重要課題が一致するのは当然のことです。しかし、経済成長や震災復興のために財政出動すれば、財政危機を悪化させます。一方、財政危機を治療しようと緊縮政策や増税に走れば、景気をさらに悪化させる恐れがあります。この二律背反の中で出口を見つけなければならないという極めて厳しい状況が現在の日本です。

    この二律背反は日本を悩ませているだけでなく、アメリカやヨーロッパ連合(EU)も同じです。そして、主要国がいずれも出口を見いだせないでいる最大の原因は、政治家たちが目先の自分の選挙を優先させ、国の将来にかかわる痛みを伴う重要な政策決定を先送りにしていることです。最近ではそれを「フジヤマ病」あるいは「日本化」というようにさえなってしまいました。先送りに関しては民主党政権にだけ咎があるわけではありません。バブルのころからの自民党政権も同罪です。

    しかし、今回の民主党代表選挙でも、民主党をがんじがらめにし、この2年間を「重要な政策の先送り」に終始させた構図は変わりません。それは、衆議院「300議席の呪縛」です。「300議席の呪縛」は、民主党の分裂・崩壊回避を国民の利益に優先させてきました。国民の利害も「あちら立てれば、こちらが立たず」なのですが、その中で一部に痛みを与えても、全体を好転させることで、将来的にその痛みを回復するような勇気ある決断をするのが政治の役割です。しかし、それをやれば、党が分裂することもありえます。300議席まとまってこそ維持できる政権のうまみは捨てられません。その結果が党内の政策論争を回避する結果としての「先送り」です。他方、議員の多くは、次の総選挙が自身の議席喪失に直結しかねないため、勇気ある行動をとるどころか、300議席に安住しています。

    けさの朝日新聞社説は「民主党は一から出直せ」と説きましたが、果たしていまの民主党には回帰すべき原点がまだあるのでしょうか? マニフェストの扱い、小澤一郎元代表の党員資格停止問題の態度を見ても、民主党は四分五裂状態です。「どの候補が勝っても政権維持については全党一丸でいようね」という「300議席への安住」だけでは一致するのですが、新体制が発足すれば、内閣、党人事で食い違いがすぐに露呈するでしょう。そして政策面でも、政権交代以来の政治空白を招いてきたのと同じ党内の分裂が新体制をまひさせそうです。

    民主党の支持率が下がっても、自民党の支持率がそのまま上がるわけではないという現在の世論状況を見れば、民主党だけでなく、自民党、公明党もふくめて、現在の政党が国民に選んでもらえるに値しないものになってきてしまっているのは明らかです。世論は早期の総選挙だけでなく、それをきっかけとした政党の再編を求めて始めています。それを妨害している最大の要因も、民主党の「300議席の呪縛」です。民主党の新体制に国民がほとんど期待しない原因はそこにあります。




    夏はNHKの戦争ドキュメンタリー - 2011.08.15 Mon

    終戦記念日の15日午後は、録画しておいたNHKスペシャル2本「原爆投下 活(い)かされなかった極秘情報、 続いて「圓の戦争」、さらに「”9.11テロ”に立ち向かった日系人」とハシゴをすることになりました。大量の音楽CDをネットワーク・ハードディスクにコピーをしていたため、最初はコピー待ち時間の傍らだったのですが、次第に画面が主になりました。いずれも見ごたえのある作品でした。

    「原爆投下 活(い)かされなかった極秘情報」は広島、長崎に原爆を投下した米軍のB29のテニアン島出撃を当時の陸軍特種情報部が無線傍受で探知し、情報を参謀本部上層部に上げていたのに、迎撃はもちろん、空襲警報すら出されなかったという秘話です。「圓の戦争」は、日中戦争、第二次世界大戦を戦った日本の巨大な軍費を賄っていた特殊なメカニズムについての貴重な記録です。そして、「”9.11テロ”に立ち向かった日系人」は、9.11テロ直後の米国で人種差別と闘ったノーマン・ミネタ元米運輸長官が、大戦中に日系人強制収容所に入れられていた経験を振り返る中から米国社会を語るものです。番組を見ていない方は、それぞれの番組の名前(青色 下線部)のところをクリックしてください。


    7年前大学教員になり、久しぶりに夏季休暇に恵まれるようになって、夏はNHKのドキュメンタリーをよく見るようになりました。数年間続いた「兵士たちの戦争」がきっかけでした。戦前の日本の都市の多くには、陸軍の師団や連隊がありました。NHKの各地方放送局が地元の師団、連隊の悲惨な戦史を、地元の生存者を訪ねて物語るものです。登場する元兵士たちは90歳前後、生存兵士たちの多くが亡くなっていく中での貴重な聞きがたりです。初めは同業者として、「時」と「地の利」を生かした上手な企画だなと思ったのですが、やがて、NHKの地方放送局の高い力量にも気付かされました。

    「情報」がありながら、それを活かせず、むざむざ20万人余の犠牲者を出した国家上層の不手際を突く「原爆投下 活(い)かされなかった極秘情報」にしても、破綻することが予測されるのに、無謀な戦争のために国債や通貨の乱発を続けた国家の愚かしさを描き出した「圓の戦争」にしても、原発事故後の無為無策や、借金漬けなのにご機嫌とりのマニフェストを捨てられないいまの政治を思い起こさせずにはおかない現在的視点があります。

    訴求力はハイビジョンの映像のせいだけではありません。戦争と国家、国民の関係を考えるとき、新聞がともすれば、「逆コース批判」と「自虐史観批判」の不毛な二項対立にはまり、教条的になりがちな中で、時間と手間をかけて、中庸の立場からわかりやすく語るNHKの戦争ものの視点は貴重です。若いひとたちにはぜひ見てもらいたいと思います。




     

    「ありもの」と「総選挙」が新政権のキーワード - 2011.08.14 Sun

    お盆を迎えて、3月11日以来の日本の異常事態も表面上小休止の盛夏です。菅直人首相はようやく延命をあきらめたようです。お盆以降は日本の政治も前向きに動き始めそうです。メディアも、完全な死に体なのに往生際悪く小細工を繰り返す菅首相について批判を繰り返さなければならないというなんともやりきれない状況から解放されます。やれやれです。

    ●政治空白に終止符が打てるか?

    特例公債法と再生エネルギー利用法が成立して、菅首相が約束通り退任すれば、民主党の新代表選挙、続いて新首相の指名、そして政権の構成と新内閣の組閣が行われます。3月11日以来の事実上の政治空白に終止符を打つことが期待されます。とはいえ、菅首相退任は行き詰まり感からの心理的な解放感をもたらすものの、民主党が衆議院では圧倒的多数なのに、参議院では少数という「ねじれ国会」には変わりはありません。おまけに民主党は首班指名で優先的な力を維持していますが、「マニフェスト」をかなぐりすてただけでなく、党内もバラバラで、もはや政権党としては政策的にも、組織的にも一体性を失ってしまいました。こうした中で、今後の政治の動きを見ていくうえで重要なキーワードは「ありもの」「解散・総選挙」です。

    ●「理想の指導者」を求めることはできない

    新首相に理想の人材を期待することはできません。これが現実です。いま私たちが見ている民主党の中ボスたち、つまり「ありもの」から新首相を選ばなければならないということです。いま有力とされている野田佳彦財務相をはじめとした中ボスたちの世論調査での期待度は5%前後。まさに「どんぐりの背比べ」です。みんなの党の渡辺喜美代表は「B級グルメどころかD級グルメ」と表現しました。しかし、「理想の指導者」を求める余裕はありませんし、ときには危険でさえあります。新首相は、野田氏にせよ、だれにせよ「ありもの」の中から選ばねばなりません。また衆議院の現在の多数派である民主党の中から選ばねばなりません。もし、民主党がほんとうに「挙国一致」「救国」を望むなら自民党など野党の中の優秀な人材に総理大臣を譲るという方法もありますが、残念なことに民主党にその潔さを期待するのはむずかしそうです。また、野党にも衆目の一致する首相候補がいないことも世論調査の示すところです。

    ●「ありもの」を上手に使う政治上手になろう

    だからといって失望する必要はありません。料理上手というのは、完璧なレシピと上等な食材から料理を作る人ではありません、冷蔵庫の中のありものの中からでもおいしいものを作れる人をいいます。これまでの日本人は、長く続いた自民党政権下で、「正しい政治」についての妄想をふくらませすぎてきました。その結果、絵に描いたモチの「マニフェスト」や「米軍駐留なき安保」という幻想に飛びつき、結果として東日本大震災、原発事故対策での政治の不始末を被ったのでした。私はイソップの寓話「カエルの王様」を思い出します。カエルの王様はカエルが一番です。「ありもの」の政治家の中から首相を選び、それを上手に使い、だめなら首をすげかえればよいのです。どうも鳩山由紀夫前首相や菅首相というのは、この寓話の「流木」の王様(ひょっとしたら、もうコウノトリ?)だったような気がします。そろそろ、カエルの王様に戻りたいものです。

    ●国民に求められるもの

    しかし、政治の主人公である国民にもやるべきことがあります。それは、もうすこし我欲を捨てることです。バブル崩壊以来の日本の政治の最大の課題は、グローバル化の結果、新興国が中心になってきた世界に適応できるように日本を作り替えることでした。しかし、それは様々な既得権の壁に阻まれてきました。政治家たちは、選挙だけを気にして重要な決定を先送りしてきました。いま、世界では、これは「フジヤマ病」(英誌TheEconomist)と名付けられています。日本同様、財政危機を脱する力がないオバマ米大統領やメルケル独首相もその患者とされています。先進国がグローバル化に適応するには、有害な既得権をなくしていく必要があります。しかし、国民の多くは他人の既得権は非難しますが、自分が乱用している既得権には知らぬ顔をします。最近の日本での好例は大震災、原発事故の被災者に対する高速道路の無料使用です。茶碗が壊れただけでも被災証明書が出るというのはまだしも、常磐道の水戸インターを使うことで、被災地とまったく関係ないトラックが無料通行しています。水戸インターで出入りするトラックの14%がこうした制度の乱用だったそうです。14%というのはなかなか興味深い数字です。数知れぬ政策的補助や給付、さらには社会福祉など弱者への給付などの100%すべてが乱用ではないとは考えられません。しかし、こうした乱用されている既得権を削ることができず、赤字国債を乱発してきたのが、自民党政権、民主党政権を通じての日本の政治の過ちです。「ありもの」の新首相に、日本が本当に必要とする政策決定をしてもらえるようにするには、国民が賢くかつ道義的になる必要がありそうです。

    ●総選挙を意識した与野党せめぎあい

    一方、「ありもの」の新首相が誕生しても、政治の趨勢はいやおうなく「解散・総選挙」を意識したものになっていきます。野田財務相は13日、新政権の構成について自民党、公明党を含む大連立の必要性を指摘しました。たしかに、「ねじれ国会」の現状では、大連立は大きな意味を持ちます。現在の与野党の勢力配置で大連立に移行すれば、国会での与党は圧倒的多数になり「ねじれ国会」は解決します。しかし、巨大与党は社民党に近い民主党議員からタカ派の自民党議員までを抱え込みます。これでは政権内部がねじれるだけです。また、民主党からの大連立の誘いは多分に来たるべき総選挙対策の匂いがします。野党を政権内に誘い込んで共犯者にすれば、総選挙での民主党の敗北を軽減することができるかもしれないからです。一方の自民党、公明党は大連立が国民の声となったときには追い込まれます。大連立に参加して共犯者の道を選ぶか、野党に徹して「挙国一致」に背を向けたと非難されるかのどちらかです。いまのところ、自民党内でこの中間の「閣外協力」の線が強いそうなのは、自民党の利害からいえばうなづけるところです。こうした現状を見るかぎり、与党も野党も口では「挙国一致」を唱えながら、党利党略をなかなか超越できていないというのが現状です。

    ●意味のある総選挙を

    しかし、政治はこの現状を前提としなければなりません。ないものねだりをしている余裕はありません。「ありもの」の総理大臣と「大連立」か「閣外協力」の内閣で再出発しなくてはならないのです。いずれにせよ、民主党単独政権(国民新党などとの小連立もそうですが)はマニフェストの瓦解とともに正統性を失っています。まして、東日本大震災+原発事故は政権交代時の条件を根底的に変えました。議会制民主主義の公理からいえば、解散総選挙が必要なのです。ただちにそれができないとすれば、新しい政権の重要な任務のひとつは、可能な限り早く総選挙を行うことです。そのためには、「一票の価値」の不公正を是正する必要がありますし、そもそも、自民党、民主党という二大政党が解体しての政党再編成を経た総選挙が理想的です。「支持政党なし」が60%を超える状態というのは既成政党の存在理由が極めて希薄だということを意味します。まさに日本の将来を左右する来るべき総選挙は選び甲斐のある、そして意味のある総選挙でありたいものです。しかし、国会議員たちが享受している既得権(議席)も、国民が享受している既得権同様たいへん頑固な障害です。
     

    瓦礫の女たちと「なでしこ」 - 2011.07.18 Mon

    「何度見てもいいね!」。なでしこジャパンが女子サッカーのワールドカップに輝いた翌日の18日、このことばが人々の挨拶がわりでした。再放送を見ても、拍手がわきます。おめでとう。ほんとうによくやったと思います。ドイツ戦、スウェーデン戦と未明の中継で手に汗を握った私でしたが、米国との決勝戦の中継を見るのはあきらめていました。翌日は終日テレビ朝日で「そうだったのか!学べるテレビ」の収録なので、寝不足は禁物だったからです。夜12時にベッドに入り、ふと目が覚めたのが、米国の先制ゴールの直前、追いつくことを期待していると、宮間選手の同点ゴール。ワンバック選手に2点目を入れられた延長戦後半、「澤さんがいるから、大丈夫」とつぶやきながら、最後まで見通すことに方針転換。あとは日本中で中継を見ていた方々と同じ感動、興奮でした。

    ●やればできる

    3月11日の東日本大震災、原発事故以来、日本人が心をひとつにして喜んだのはおそらく初めてのことでしょう。「なでしこ」は被災者をはじめ、日本人全体を勇気づけてくれました。「やれば、できる」と。

    ●瓦礫の女たち

    感激しながら、私の頭に浮かんだのはドイツの「瓦礫の女たち」(Truemmerfrauen トリュンマーフラウエン)ということばでした。第二次世界大戦に敗れたドイツの都市は連合軍の爆撃で瓦礫の山と化していました。復興を担ったのは女たちでした。男たちはというと、青年、壮年の多くが戦争にとられ、国内に残った男の多くは老人や傷痍軍人でした。その中で、女たちは安い賃金で復興の礎を築きました。敗戦国ドイツの戦後史を切り開いた「瓦礫の女たち」ということばは、感動と感謝を込めて語り継がれています。

    瓦礫の女 
    瓦礫の女たち

    ●終戦の詔勅と「今夜のおかず」

    同じ敗戦国であった日本。以前読んだ本にこんな記述がありました。1945年8月15日正午の終戦の玉音放送を聞いた男たちの多くが、なお本土決戦を叫んだり、「自決する」などといったりしていたとき、女たちは「さあ、今夜のおかずは何にしよう?」と考えていたというののです。配給物資にも事欠く食料不足は戦後生まれの私には想像もつきません。しかし、ここでも、復興の第一歩を踏み出したのは女たちだったということを筆者はいいたかったのです。

    玉音放送 
    終戦の詔勅に頭を垂れる人々

    ●さあ、新しい日本をつくろう

    震災、原発事故から100日余りが立ちました。19日には、放射能汚染したワラを食べた肉牛が新潟県、山形県からも出荷されていたというニュースが伝えられました。このニュースが示すように、常に後手後手に回る政治に、ともすれば心が萎えがちになる私たちを「なでしこ」の女たちは、はげましてくれているようです。「さあ、新しい歴史をつくろう」と。

    ●ふつうのことをふつうに

    菅直人渋面 

    そんな話をしていたら、「学べるニュース」のディレクターK君は「ふつうのことをふつうにやるのが大事なんですね」といいます。「なでしこ」の選手たちは一発を狙うのでなく、練習でやったことをその通りに実行して、まさかのワールドカップを手にしました。大震災、原発事故が「想定外」であったとしても、その後の政府が「ふつうのことをふつうにやっていれば、いまほど「後手後手」と批判されることはなかったでしょう。その責任者である菅直人首相は決勝戦応援のためのドイツ行きを画策したと伝えられます。さすがに、これは制止されたようです。それでも、菅首相は「なでしこ優勝」に「劣勢になっても最後まであきらめないで頑張り抜く『なでしこジャパン』の闘いは、皆に勇気を与えてくれた。勝ち進むごとに『Thank you for your support』のメッセージ横断幕を世界に示す機会も増え、日本人皆の『思い』を世界に届ける役割まで担ってくれた」という談話を発表します。この談話の「劣勢になっても最後まであきらめないで頑張り抜く」というフレーズは何か菅首相自身を語っているように聞こえてしまうのです。他人の手柄を横取りすることの多いといわれる菅首相は「なでしこ」の快挙をも政治的に利用するつもりなのでしょうか。菅首相がやるべきだったことは、計画もないまま「脱原発」を打ち出すような一発狙いでなく、「ふつうのことをふつうにやることだったのですが。


     

    身勝手を見抜かれた菅直人首相 - 2011.07.12 Tue

     11日は東日本大震災から4か月目でした。津波の被災地の状況や福島原発周辺の被曝状況が目に見えて好転したとはいえない4か月目です。きょう公表されたNHKの世論調査によると、菅直人内閣の支持率は16%(先月より9ポイントの急落)、民主党の支持率は13.6%(先月より7ポイント近く急落)と、いずれも政権交代以来最低(民主党支持率は2007年5月以来の低率)です。内閣支持率は麻生太郎内閣の最末期の15%に近い一方、自民党の支持率は23.4%とほぼダブルスコアに近い数字です。就任わずか8日で、松本龍復興担当相が被災地に対する暴言で辞任する一方、菅首相自身が海江田万里経産相のはしごをはずして玄海原発再稼働への同意を翻し、突然原発のストレステスト(耐性検査)を振り回して、世間を呆れさせたことを考えるとこれは当然の結果といえるでしょう。

    ●原発事故は想定外としても

    4か月の節目にあたって、菅首相の責任(無責任)を整理しておきたいと思います。3月11日の東日本大震災の発生と東京電力福島原発の過酷事故の発生は、そこまでに至る道で過去の自民党政権と東電そして原子力ムラが積み重ねてきた過失を考えれば、菅首相にとっては「想定外」とするのがフェアでしょう。しかし、それからの失政はもはや看過しきれないところまできています。NHK世論調査の数字、菅首相の退陣時期について「ただちに」という回答が38%で最多という数字が如実にそれを示しています。

    ●想定された事態に対応できない菅首相

    菅首相の罪は、大震災、原発事故発生という事態を受けて「想定されたこと」に対する対策が後手後手に回り、実行すべき対策が十分に講じられてこなかったことにあります。ひとつひとつ挙げているときりがありませんので、ストレステスト事件に焦点を絞ります。ストレステストとは、原発の運転再開や継続を判断するための新たな基準を作るための前提です。通常より過酷な条件を加えたコンピューター上のシミュレーションで原発の安全の度合いをはかるものです。ストレステスト自体、さらには「新しい安全基準づくり」自体は必要なことです。問題は、それを原発事故から4か月も過ぎようというときに突然言い出したことです。

    ●想定されていた電力需給逼迫に向けて菅内閣がやったこと

    ストレステストや「新たな基準づくり」は時間がかかるだけでなく、電力供給に深刻な影響を与えます。このままだと来年の5月には全国の原発がストップする事態も予測されていますし、冬場の電力不足が国民生活に与えるダメージは夏場の電力不足よりも深刻だといわれています。そして、福島原発事故以降、すなわち3月の時点で、この夏場の電力不足はだれにも予測されたことです。東電、東北電力は休眠火力の活用や電力会社間の電力融通で対処しようとしてきました。一方、菅政権がやったことは蓮舫さんという節電啓発担当大臣をおき、節電PRをしたことと、電力使用制限令を発動したことです。

    ●ねこなで声と罰則

    節電啓発担当大臣が置かれたとき、私はアフガニスタンのタリバーン政権が置いた「勧善懲悪大臣」を思い出しました。これは、イスラム原理主義の戒律を守らせるいわば宗教警察のようなものです。しかし、蓮舫さんは7月の改造で姿を消し、その任務は細野豪志原発担当の坦務の中に消えてしまいました。原発担当大臣が節電を坦務するのは本来当然のことですが、そもそも何もできなかった蓮舫さんにやらせたことは菅首相が国民を甘く見ていたことの表れです。電力制限令というのは要するに「電力がないから使うな」と命令しただけのことです。「ねこなで声」や罰則で電力消費をむりやり減らそうとしたのです。夏場の電力不足という「想定された」事態に手をこまねいていたというなによりの証左です。

    ●危機のガバナンス

    菅内閣は何をやるべきだったのでしょうか?マクロ、ミクロの経済構造や社会の電力消費慣習を利用あるいは改革して短期的には電力需給のバランスをとること、企業の生産活動や国民生活に電力需給が好転する見通しをつけることです。これが危機のガバナンスです。菅内閣でなく、ほかの内閣であったとしてもやらなければならなかったことですが、現にここに存在している菅内閣が実際にやったことは、電力需給の逼迫の最頂点で、見通しを真っ暗にすることでした。

    ●見抜かれている手前勝手

    その一方で、東京電力管内の11日の最大電力使用は4,599万㌔ワット(供給量の88%)と今年最高を記録しましたが、梅雨明け前だった昨年の相当日を大幅に下回っています。これを蓮舫さんの啓発のおかげだと考える人がいたら、相当ノーテンキな人です。企業も市民も「使うな」といわれたから使わないのではありません。いま日本が大変な危機にあると市民が認識しているからこそです。そして、この市民のリアルな危機感はNHK世論調査の「菅総理大臣が急きょ原発の運転再開や継続を判断するための新たな基準を作るよう指示したことに対する評価を聞いたところ、▽『大いに評価する』が3%、▽『ある程度評価する』が22%、▽『あまり評価しない』が34%、▽『まったく評価しない』が32%でした」にも表れています。ストレステストの必要は原発事故直後から野党などによって指摘されていたのに、いまごろになって持ち出した菅首相の「『脱原発』依存」=地位しがみつき、を見抜いているのです。

    ●ストレステストをやるべきだった対象は?

    3.11後に想定された事態に適切な対応ができない菅直人という政治家にこそ、総理大臣になる前に「ストレステスト」をやっておくべきだったと思います。



    菅首相の「脱原発依存」とは - 2011.07.08 Fri

    菅直人首相が突然海江田万里経産相の原発の運転再開安全宣言をくつがえして原発ストレステスト(耐性検査)を言い出した翌日の7日は蜂の巣をつついたような大騒ぎです。

    ●政府与党も大混乱

    首相に後ろから鉄砲を撃たれ、6日 「もう頭に来た。今さら何を言っているんだ」と怒りをぶちまけたといわれる海江田大臣は7日の参議院予算委で、「時期が来たら責任をとる」と辞任を表明しました。海江田大臣の安全宣言を信じて玄海原発の運転再開を了解した岸本英雄玄海町長は「了解は苦渋の決断だった。政府のやり方は、小ばかにしている」と強い憤りを表明して了解を撤回、佐賀県の古川康知事は、全原発でストレステストを行う政府方針について、「テストが終わらないと再稼動できないのか(あるいは)できるのか、言われる方によって発言が違う」と述べ、政府部内で見解が統一されていないと批判。古川知事と会談した枝野幸男官房長官は陳謝せざるをえなくなりました。民主党の岡田克也幹事長も「ストレステストがそもそも再稼働の条件なのかもはっきりしない。今ごろになってそういう議論が出てくるのは釈然としない」と不満を表明、政府の原発対応を「ちぐはぐ」と批判しました。

    海江田 
    海江田経済産業相

    ●こりない菅首相

    ご本人は終日、参議院予算委員会で答弁に立ちました。自民党の礒崎陽輔委員(自民)に「官邸ジャック」と揶揄され、いわゆる退陣3条件を「身代金要求」と表現されると、青筋を立てましたが、批判には「逆ギレ」の術。「細野豪志原発大臣はストレステストをすべてパスしなければ運転再開はないというが、海江田大臣は玄海原発はテスト実施前でも再稼働は可能という。内閣の責任者としてどちらが正しいかはっきりさせよ」と片山さつき委員(自民)に迫られても「2人の大臣に聞いてくれ」とごまかしました。「論点そらし」「同じ内容の繰り返し」は相変わらずです。

    菅直人渋面 

    ●ひとつの仮説

    政府、与野党の信頼関係はさらに傷つき、「政治空白」がさらに深刻になりかねません。政府・与党関係者もあわてているのに、菅首相一人ちっともこりていません。なぜでしょうか? かりに菅首相に私が直接問いただしたところで、正確な答えが返ってくることはありえないので、ひとつ仮説を立ててみました。

    ●キーワードは「脱原発依存」

    それは、「脱原発依存」です。ふつうこのことばは、「脱『原発依存』」、すなわち、「原発依存」から脱却することと理解されています。当面、原発を維持せざるをえないと考えている人々をもふくめ、いま、国民の大半のうなづくところです。しかし、菅首相の場合はことばの意味が違うというのが、私の仮説です。菅首相の「脱原発依存」は「『脱原発』依存」と読みます。すなわち、「脱原発」に依存することです。菅首相の「『脱原発』依存」は国民の中にある不安をかきたて、「脱原発」の権化になることによって、「何もできない総理」「存在そのものが障害」とまでいわれている状況を一発逆転し、「政治家として歴史に名を残す」ことを可能にするのです。

    ●「脱原発」シングルイシューの大博打

    その手順はこうです。内閣不信任案の再提出や参議院での問責決議などで、いよいよ絶体絶命に追い込まれたときには、「衆議院解散」の大博打に出るのです。そうなれば、マニフェストもなんのその、「脱原発」のシングルイシューです。ほおっておけば、軒並み落選しかねない民主党のかなりの部分は議席を守るために、なりふりかまわず、「脱原発党」に付和雷同するでしょう。

    ●勝てば英雄、負けても殉教者

    そして、国民の不安を煽るのに成功して選挙に勝つというのがベストケースシナリオです。海江田大臣や古川知事らが心配する「国民経済の今後」は顧慮されません。では、選挙に負けたらどうでしょうか? 政治家菅直人は「国民の安全という正義を掲げて戦ったのに、不正に敗れた」殉教者になれるのです。選挙の勝敗、どちらに転んでも、いまのまま雪隠詰めになって不名誉な退陣に追い込まれて「無能無策の宰相」で終わるより、菅直人個人にとっては遥かに名誉な未来が待っているのです。

    ●見えてくる合目的性

    これは、あくまでも仮説だということを承知のうえ、読んでいただけたと思いますが、この仮説を立ててみると、「思いつき」「無責任」と酷評されている菅首相の言動に一定の合目的性が見えてくると思います。そして、菅首相がドジを踏めば踏むほどそのリアリティは増していくでししょう。しかし、この場合の「合目的性」は菅直人個人のものであって、国民全体にとってではなさそうです。そして、歴史上、国民の中にある巨大な不安を煽り、利用して権力を奪取した政治家を洋の東西でチェックしてみると、肌に粟を生じるような実例に気づくことでしょう。


     

    1粒で2度おいしい? 菅首相と原発ストレステスト - 2011.07.06 Wed

    「やっぱりね」という感じでした。6日審議が再開された国会の衆議院予算委員会で菅直人首相は自民党の石破政調会長から「あなたは1度でも『辞める』と言ったか」とただされると、首相は「『辞める』『退陣する』という言葉を使ったことはない」と強調し、「私が最高の首相だとうぬぼれてはいないが、責任から逃げるわけにはいかない」と追及をかわしました。6月2日の内閣不信任案採決前の民主党代議士会での「首相あいさつ」についてのことです。このあいさつはメディアによって「退陣表明」と報道されてきました。しかし、菅首相には退陣するつもりがないことをついに公式に本人の口で確認したのです。

    菅直人 
     
    ●後味の悪い「やっぱり」

    代議士会の前、菅首相と膝詰め談判した鳩山由紀夫前首相の詰めの甘さは責められますが、「身内だからそこまで書かなくても」といいくるめて確認書に「退陣」ということばを盛りこませなかった菅首相は悪徳不動産業者まがいの手練手管で不信任案を葬り去るのに成功しました。菅首相の真意は6月4日付の私のブログの通りだったということです。石破氏はこのメディアの一斉報道を「世紀の誤報」と形容しましたが、いずれにせよ後味の極めて悪い「やっぱりね」です。

    ●この一ヶ月余はなんだったのか?

    与野党、メディアともこの一ヶ月余、「退陣表明」という誤った理解を前提に「退陣の条件」論議に血道をあげてきました。これはエネルギーの無駄だったということなのでしょう。そして、これには政治空白という副産物がありました。その一方で、菅首相を取り巻く環境はますます悪化しています。「早期退陣」を求める声はいまや民主党執行部にもいきわたりました。「本当に情けない内閣だ。民主党として支える価値があるのかっ」(安住淳民主党国会対策委員長)「一分一秒でも早く辞めてほしい」(渡部恒三党最高顧問)というところまできてしまいました。

    安住淳 渡部恒三
    安住淳氏     渡部恒三氏

    ●菅首相の新たな一手

    菅首相も形勢がさらに悪化していることはわかっているのでしょう。6日、新たな手を打ってきました。「原発のストレステスト」がそれです。運転停止中の九州電力玄海原子力発電所をはじめとする全国各地の原発再稼働について、菅首相は「(安全性確保の)新たなルールを作り、国民が納得できるよう、海江田経済産業相と細野原発相に指示を出している」と述べ、原発の運転再開を判断するための新たな基準やルールを作成することを関係閣僚に指示したことを明らかにした。「新ルール策定まで、再稼働の判断を留保する考えを示したもの」と見られています。

    ●後ろから撃たれた海江田経産相

    海江田2 
    海江田経産相

    玄海原発については海江田経産相がすでに再稼働を要請済みで、地元の町長は再稼働容認を表明していました。唯一わからなかったのは菅首相の意向でした。インターネット番組では「海江田経産相と同じ考え」と話していたようですが、公けには意向を明らかにしてきませんでした。このため、古川康佐賀県知事は国の意向の確認のため、「菅首相との直接の会談」を求めました。首相側がこの申し入れを受け入れなかったため、古川知事が再稼働容認の延期を表明した矢先の「ストレステスト発言」です。たしかにさらなる安全のためにさらに厳格なテストを経て、新しい安全基準をつくるということ自体は悪いことではありません。そして、菅首相にとっては「安全、安心の守護神」を自称できる妙手です。しかし、「安全だから再稼働してほしい」という経産相を後ろから撃つような首相の出方は・・・・ 6日夜のNHKニュースウォッチ9に生中継で出演した古川知事は「なぜ、いまなのか、わからない」と繰り返しました。NHKは午後7時のニュース、9時のニュースとも「首相の真意は?」と「?」マークつきの報道です。

    ●佐賀県知事が首相に突きつけた匕首

    古川康 
    古川康・佐賀県知事

    でも、解釈はそれほどむずかしくなさそうです。古川知事の「会談要請」は菅首相のどてっぱらに突きつけられた匕首でした。もともとは海江田経産相の発案だった「浜岡原発の運転停止」を横取りした菅首相ですが、浜岡以外の原発の運転を再開しなければ、日本経済と社会にに大打撃になることは理解しています。そこで、玄海原発の運転再開については海江田経産相を矢面に立たせ、自らの立場をあいまいなままにしようとしてきました。「手柄は自分に、責任は他人に」というもうおなじみの菅流なのでしょう。しかし、県民の安全と国策の板挟みにされた古川知事はたまりません。将来何かあった場合に知事の責任にされそうな形勢を読み取ったからこそ、「菅首相との直接会談=首相の意向確認」を求めたのです。そして、菅首相がこれを回避しようとしたため、「運転再開容認決定の延期」を表明しました。「首相の保証がなければ再開を容認できない」ということです。さあ、今度は追い詰められたのは菅首相の方です。そこで、ちゃぶ台をひっくり返すような挙に出たのが「ストレステスト」です。「安全だから再開してほしい」といってしまった海江田経産相の立場などおかまいなしです。

    ●1粒で2度おいしい? ストレステストのおまけ

    大カト 
    大カト

    これにはおまけまでついています。第2次補正予算や特例公債法、再生エネルギー特別措置法と次々商法のように増やしてきた「自らの責任」に新しい商品、ストレステストを経た「(安全性確保の)新たなルール」を付け加えれば、首相の地位にとどまり続けるための新しいガードになるのです。6日の衆院予算委で衆院解散を求めたみんなの党の渡部喜美代表に対し、菅首相は「満身創痍、刀折れ、矢尽きるまで、力の及ぶ限りやるべきことをやっていきたい」と答えました。どれほど呆れられ、どれほど支持率が下がっても、経済や社会が混乱しても首相の座にしがみつき続ける。これがNHKが「?」マークをつけた「首相の真意」のようです。あるベテラン政治記者は、6日の衆院予算委員会審議を横目に、「もう、『うんざり』と書くのにもうんざりした」と述懐していましたが、共和制ローマ期の政治家、大カトは第二次ポエニ戦争後のカルタゴの処遇について、元老院で演説を行うときに常に(全く関係無い話題であっても)「ともあれ、私はカルタゴは滅ぼされるべきであると思う」と末尾に付け加えたそうです。いまのメディアに大カトにならい「菅退陣」を要求し続ける執念あるいは根気はあるのでしょうか?執念においては菅首相の方が上かもしれません。


     

    菅直人首相の「次々商法」と「人事」 - 2011.07.04 Mon

    6月7日に、菅直人首相の出所進退について書いて以来、約ひと月立ちました。そのときの書き込みは次の通りです。

    ●ひと月前は

    菅直人首相の命運もいよいよ尽きようとしています。「月内退陣論が加速」(7日付朝日新聞朝刊1面)。復興基本法が17日にも成立する運びになったのを機に、政権内にも菅首相に見切りをつけようという考え方が支配的になってきたためです。菅首相は、なお第2次補正予算案や特例公債法案にこだわっていますが、これらは野党の反対で合意のめどが立ちません。これら2法案が菅首相の延命の口実として利用されるのを許しては「菅首相が存在するという政治空白」が延々と続きかねないということに与党内も辛抱できないということです。

    菅直人 

    ●何が変わって何が変わらなかった

    ひと月たって変わったのは復興基本法が成立したことと、菅首相が「若い世代に責任を引き継いでいく(退陣ではありません。念のため)一定のめど」に、さらに条件(再生エネルギー特別措置法)を付け加えたことです。そしてさらに社会保障と税の一体改革まで上乗せしそうな風情、国民生活センターが消費者に警戒を呼びかける「次々商法」のようです。そして、変わらないのは「菅首相が存在するという政治空白」です。

    ●変わったことから飛び出した「人事2つ」

    この中で、数少ない進展である「復興基本法」は菅首相に2つの”業績”を付け加えました。ひとつは自民党の浜田和幸参院議員(鳥取)に総務省政務官のポストをえさに自らに投票した有権者を裏切らせたこと。いまひとつは、復興担当相に松本龍衆院議員をあてた人事です。

    ●立ちくらみ

    浜田政務官人事については、仙谷由人官房副長官の「立ちくらみがした」がまさにいいえて妙です。また就任にあたっての浜田氏の発言を正常と思う人が多くないことを願うのみです。

    浜田 
    浜田和幸総務政務官

    ●被災者の気持ち逆なでする松本発言

    松本復興担当相については、「やっぱりやったか」という印象が強いようです。松本氏は昨年の第一次菅内閣で環境大臣兼内閣府特命担当大臣(防災担当)に起用されました。防災担当としては、3月11日の東日本大震災を経ても「存在感が希薄」といわれていましたが、復興担当相に起用された途端、被災者の気持ちを逆なでする発言が飛び出しました。Wikipediaによると、それは以下のようなものです。

    ●「知恵出さないと助けない」

    2011年7月3日、復興担当相就任後に初めて被災地入りし、岩手県を訪問した際に、達増拓也知事との会談で「おれ、九州の人間だから、東北の何市がどこの県とか、わからんのよ」や「知恵を出したところは助けるけれど、知恵を出さないところは助けない」。などと発言。

    ●「そうしないと、我々は助けないぞ」

    さらに午後から訪問した宮城県庁では、数分遅れで応接室に入ってきた村井嘉浩知事に対して「お客さんが来る時は、自分が入ってから呼べ。しっかりやれよ」、「長幼の序がわかっている自衛隊ならそんなことやるぞ」と発言した。また漁業の集約や民間への開放など、村井知事が打ち出していた独自の計画案に対しては「県でコンセンサスをとれよ。そうしないと、我々は何もしないぞ」と発言。さらに会談の最後には「今の最後の言葉はオフレコです。みなさん、いいですか、『絶対書いたらその社はもう終わり』だから」などと発言し、周りにいた職員や取材陣が緊張した表情で沈黙する様子と共に東北放送の「TBCニュース」、TBS News-iで放送された。(wikipediaからの引用終わり)

    松本竜
    松本龍復興担当相

    ●NHKの映像は事実を物語る

    民主党や菅内閣は松本龍氏という政治家をなぜ重用せざるをえないのでしょうか?野党からは松本大臣の辞任を求める声が出てきているとのことです。4日夜のNHK「ニュースウォッチ9」は宮城県庁での松本発言の映像 を流しました。見た人々はどう思われるでしょうか? 週内には国会の審議が再開される見通しですが、国会はこのひとをどう処置するのでしょうか?




     

    NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

    おすすめブログに

    萩谷 順

     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
    出演番組
     スーパーJチャンネル(金)
     モーニングバード!(水)
     ワイド!スクランブル(月)
     ビートたけしのTVタックル
       (不定期)
    過去の出演番組
     そうだったのか!学べるニュース
     やじうまプラス'04-'10
    ニュースステーション '00-'04
     ニュースレーダー '85-'87
     (いずれもテレビ朝日)

    お問い合わせや講演の依頼は...

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    本人から返信します(お名前やメールアドレスなど個人情報は本人の同意なしには公開しません)

    いま何時?

    ※この時計の時刻は、閲覧しているパソコンのものであり、必ずしも正確な時間とは限りません

    Twitter

    最新記事

    カテゴリ

    大震災+原発事故 (38)
    政治経済 (71)
    国際情勢・グローバル化 (21)
    社会・生活・文化 (22)
    大学・教育・若者 (4)
    テレビ (4)
    講演 (2)
    IT・パソコン (2)
    たのしみ (28)
    ごあいさつ その他 (8)

    リンク

    このブログをリンクに追加する

    朝日新聞グループニュース

    月別アーカイブ

    RSSリンクの表示

    検索フォーム

    最新トラックバック

    FC2カウンター

    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。