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    カンディンスキー プラスアルファ - 2010.11.25 Thu

    東京・丸の内の三菱1号館美術館で開催されている「カンディンスキーと青騎士」展の展示作品の実家であるドイツ・ミュンヘン市立レンバッハハウス美術館を家族で訪れた1996年、うれしいプラスアルファがありました。

    ●3人の息子を呼び止めた監視員

    膨大なカンディンスキーの展示を見終わり、別棟へ向かう通路で、年配の監視員が中学生、小学生、幼稚園児だった3人の息子たちを手招きします。彼の持ち場の一室を覗くと、広い床面に規則的に石が並べてあります。現代作家の作品でした。「お子さんたちはドイツ語がわかりますか?」。オーストリア、ドイツと都合5年目のドイツ語圏でしたが、息子たちはブリティッシュ・スクールに通わせていました。「まあ、いいでしょう。ドイツ語になったら親御さんが通訳してください」と彼は息子たちに、数学の数列を使ったその作品を説明してくれました。息子たちが理解したかどうか、それはわかりませんが、これはドイツの美術館にはよくあるサービスです。

    lenbachhaus 
    レンバッハハウス美術館の庭にはMaxErnstのおもしろい彫刻が並ぶ

    シュツットガルトでも老監視員が

    私がドイツの放送局に派遣された1981年、はじめての出張で訪れたシュツットガルト。水曜日の夕方、時間があいたので州立美術館を訪ねました。4月とはいえ、雪が降った寒い日の夕方です。観覧客もほとんどいない美術館の一室で私の足が止まりました。ドイツ表現主義のオスカー・シュレンマーの絵の前でした。しばらくすると、年配の監視員が近寄ってきます。「この絵がお好きですか?」。幼いころ父の書棚にあった美術全集でシュレンマーの絵を見て、印象に残ったことを話すと、彼は説明を始めました。

    Staatsgallerie 
    シュツットガルトの州立美術館(いまは新築の別の建物に)

    ●お若いの、にやさしく説明

    「シュレンマーはもともと建築家でした。ですから、構成には興味はあるけれど、人間の顔には興味がなかった。だから、ほら、ここの人物は全部横顔でしょ」。当時私は33歳。日本人は童顔ですから、彼にはまさにJunger Mann(お若いの)です。やさしく説明してくれませす。次にウィーン分離派のオスカー・ココシュカの絵です。晩年描いたシュツットガルトの市街の絵でした。ココシュカは前年の1980年に94歳で亡くなっていました。「ココシュカは大家になった晩年、あちこちの町に頼まれて、こうした絵を描いています。でも、つまらなかったんでしょうね。よく見ると、絵の中にいたずら描きをしています。ほら、この絵の空の部分にヨットが、人の顔があるのがわかるでしょ」

    schlemmer 
    オスカー・シュレンマー「バウハウスの階段」

    ●オットー・ディクスとの出会い

    そして次にあたりを見回すと、「私は本当はこの部屋を離れてはいけないんだがね」と言いながら、少し離れた部屋に私を引っ張って行きました。そこには、Neue Sachlichkeit(新即物主義)の画家オットー・ディクスの代表的大作、Triptychon(三部作)「大都会」がありました。私はそのときまでディクスを知りませんでしたが、彼のお気に入りだったのでしょう。退廃芸術としてナチスに迫害されたディクスの生涯、爛熟した戦間期の大都会の生活を描いた大作の構成について彼は丁寧に説明してくれました。 オットー・ディクスがお気に入りの画家になったのはいうまでもありません。

    Grossstadt 
    オットー・ディクスの「大都会」

    ●美術館はその町の歴史を、人を知るよすが

    このときから私の美術館通いが始まりました。その後もいろんなところで、彼のような監視員に恵まれました。「芸術が好き」「その喜びを多くの人に分け与えたい」と思う人々です。ヨーロッパの町はどんな小さなところでもたいてい美術館があります。そこで生まれた大家やそこで暮らした大家だけでなく、その町に縁のある日本では無名な芸術家の作品が収蔵されています。その町の歴史やコミュニティがそのまま美術館のコレクションのポリシーになっています。作品そのものだけでなく、そのポリシーを知ることが、その町を、歴史を、そして人を知る手がかりになっていったのです。そのきっかけを与えてくれたシュツットガルトの州立美術館の老監視員さんは、私の忘れ得ぬ人の一人です。










     

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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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