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    権利の上に眠るもの 尖閣ビデオ流出に思う - 2010.11.06 Sat

    政府は何をやっているのでしょうか。11月4日夜、尖閣諸島での中国漁船と巡視船が衝突した映像がyoutubeに流出しました。政府がかたくなに公開を拒んでいた”国家機密”はあっさり国民の手にわたりました。一方で、ビデオは政府部内から流出した疑いが極めて濃く、国家公務員法違反事件(公務員の守秘義務違反)の可能性が高いのです。犯人が”日本のエルズバーグ”であったとしても、これは厳正に解明されなければなりません。しかし、奇っ怪なのは、政府の関心が、もっぱら「流出」に向けられ、ビデオが衝突事件の実像を全世界に明らかにしたという新しい状況の上に立つ尖閣諸島領有権問題への対策がまったくといっていいほど示されなかったことです。

    尖閣ビデオ 
    流出した尖閣ビデオから

    ●尖閣ビデオ流出で露呈したガバナンス喪失

    横浜でのアジア太平洋経済協力首脳会議(APEC)を目前にしたテロ情報の漏洩に続く、尖閣ビデオの流出は危機管理どころか、いまの政府が基本的なガバナンスを失っていることを示しています。これは国民にとっては大きな損失ですが、尖閣ビデオが異様なかたちにせよ公開されたことは明らかに国民にとって利益です。野党時代の民主党が繰り返し主張してきたように、「情報の公開」は民主主義の基礎だからです。

    ●ビデオは中国の姿勢を変えない

    問題は、尖閣諸島の領有権問題そのものへの対応です。ビデオは民間のニュースネットを通じて中国でも見られています。中国のネット世論は「日本に非がある」というトーンが強いようです。あえていえばこの反応は順当でしょう。中国では「尖閣諸島は中国領である」ことが出発点だからです。朝日新聞によると、中国外務省の洪磊副報道局長は5日、尖閣諸島沖の衝突事件を巡るビデオ映像の流出について、「録画と言われるものは真相を変えることも、日本側の行為の不法性を覆い隠すこともできない」とする談話を発表しました。「日本側が釣魚島(尖閣諸島の中国名)海域で中国漁船を妨害、駆逐、包囲しようとしたことで衝突が起きた」と改めて主張しました。

    地図 

    ●自国民の”権利”を守った中国政府

    この論理でいえば、日本が中国漁船の乗組員を拘束したことは中国の領海から中国公民を不法に拉致したことになります。中国は強硬に返還を要求し、船長以下船員を奪還しました。中国政府は自国民の利益を守るのに成功したわけですし、日本が要求に応じたことは、陰に中国の領有権主張に譲歩したことになります。

    ●自国民の権利を裏切った民主党政権

    これに対し、日本政府は処分保留での釈放によって、領有権問題だけでなく、司法の尊厳の面でも自国民の利益を譲ってしまいました。また、ビデオを国民に見せないことで、「国民の知る権利」をも侵してきました。古典的な定義ですが、国家の3要素は「領土と国民と有効な支配」です。尖閣諸島について日本政府はまずこの3要素をないがしろにしました。「民主主義」は現代の国家にとって、古典的な3要素にも劣らぬ重要な要素ですが、ビデオの非公開方針で、これもないがしろにしたの
    です。

    sengoku 菅直人 
    sengoku官房長官    菅直人首相

    ●政府は国民の「胸のすく思い」に思いをいたせ

    尖閣ビデオの流出はその民主党政権への痛烈な批判です。菅直人首相や仙谷由人官房長官の渋面をよそに、多くの国民が胸のすく思いをしていると思います。ビデオの投稿者の名前は皮肉をこめたのか、sengoku38でした。「陰の総理」を楽しんでいたかの観さえある仙谷官房長官は、いまや国民が自分をどう見ているかを悟るべきでしょう。

    ●中国は海洋権益保護に軍事力投入

    しかし、「胸のすく思い」に酔っているわけにはいきません。日本政府の無定見と無策を尻目に中国は着々と手を打っています。日本のメディアはあまり報じていませんが、ニューヨークタイムスなどによると、中国海軍は2日、南シナ海で100隻の艦船が参加する大規模な上陸演習を行いました。南シナ海では、中国はインドネシアやベトナムと領有権を巡って軍事衝突まで起こしています。一方、この夏、北朝鮮によるとみられる韓国フリゲート艦の沈没事件に対応して、アメリカが米韓合同軍事演習のために、空母機動群黄海に進出させると発表したのに対し、中国は強硬な態度を示し、演習を日本海に押し戻しました。

    中国艦艇 
    中国海軍の駆逐艦  wikipedia

    ●法制化に続く現実化を着々と

    南シナ海と東シナ海を内海化しようという中国の姿勢は、1992年に尖閣諸島、西沙諸島、南沙諸島を中国の領土であると規定した「領海法」を施行したこと、1997年に、国防の範囲に海洋権益の維持を義務づけた「国防法」を施行したこと、さらに島嶼の管理を強化する「海島法」の立法作業を進めていることで明白ですし、尖閣諸島事件後の中国の態度、2日の演習は法律の規定を実力で血肉化しようという行為であることも明白です。

    ●場当たり対応では不測の事態も

    一方、日本政府は、自国民の利益すなわち権利を現実化する具体的な策を打ち出すこともできず、次々と進展する現実にその場限りの対応を繰り返しているにすぎません。「権利の上に眠るものは保護に値しない」という法格言を思い出します。尖閣諸島事件を無かったことにして将来の友好関係に望みをつなぐという段階は過ぎたのではないでしょうか。場当たり的な対応を繰り返していては、最前線に立つ海上保安庁自衛隊も右往左往することになりかねませんし、何よりおそろしいのはその結果、小規模な偶発的武力衝突さえ起きかねないということです。

    巡視船 
    海上保安庁の巡視船 wikipedia

    ●諸国民の公正と信義に信頼する対応策をとれ

    眠りからさめて、国民の利益、権利を守るためには、APECでの日中首脳会議について、やるのか、やらないのかを含め腰の据わった対応をすること、その上で、相手がのらなくても国際司法裁判所への提訴の道を探ることが憲法前文にいう「諸国民の公正と信義に信頼」する、国際社会へのメッセージとして有効ではないでしょうか?







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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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