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    このぬるさは危うい 日本大使公用車襲撃事件 - 2012.08.28 Tue

     北京で27日、丹羽宇一郎駐中国大使が乗った公用車が襲われ、車につけた日本国旗が強奪された事件が起きました。尖閣諸島をめぐる日中緊張を反映した事件ですが、日本側の反応がいささかぬるいように感じます。
     
     日本政府は厳重な抗議を行いました。第三国であるアメリカ国務省でさえ、ただちに重大な懸念を表明したのに、その「厳重さ」には、なにやら微温的な感じがします。一方、28日の朝刊では、朝日新聞が1面サブトップ、日本経済新聞に至っては1面ではありますが、真ん中の3段見出し程度の扱いです。
     
     私は、この事件に怒り狂うべきだといっているのではありません。大使の車への襲撃が外交上極めて重大な主権に対する侵害であることを、外交慣例に照らした実物大のものとしてとらえるべきだと考えます。それに比べると、政府の態度や朝日、日経の反応は、事態を矮小化するものです。日中間の緊張は今後も、その速度はわかりませんが、エスカレートしていくでしょう。いま、実物大の扱いをしておかないと、相手を増長させ、つけ入られる危険があります。また、エスカレーションの一定段階で、日本の世論が「切れる」ことも懸念されます。国際社会が感じている日本人の国民性=「礼儀正しく我慢強いが、日本人にしかわからないある一定の限度を超えると、理解不能な反応が暴発する」おそれを感じます。
     
     大使公用車襲撃事件について、排除すべき反応をあげます。ひとつは、「国旗といったって、しょせんモノじゃないか。ここはひとつ大人の対応で」というものです。朝日、日経の反応には、この種の匂いがします。29日朝刊の社説が注目されます。いまひとつは「やはり中国は話にならない。一発目にモノ見せてやらなくてはならない」というものです。しかし、この「目にモノ」がどのようなものかわからないのが多くの場合です。そこで、ただただ怒りを溜め込んでいくのは、好ましくない「暴発」のエネルギーになっていってしまうからです。まして、「丹羽大使は媚中的だからいい気味だ」などというのは論外中の論外です。

    国旗 
     
     公用車襲撃とはどのような意味をもつのか、それを正当に理解する必要があります。大使=特命全権大使は、ある国が相手国に派遣する外交使節団の長で、最上級の階級にあります。相手国の元首に対して派遣されますから、その地位は日本国民の象徴であり、主権そのものです。大使に対しては「閣下」(excellency)という敬称が用いられます。また、公用車、ましてそれにつけられた国旗も日本国そのものですから、外交慣例や法規で「不可侵」が定められています。
     
     かつて日本が中華人民共和国に対して行ったこの種の侵害事件と比べてみましょう。それは、1958年に長崎市で起きた中華人民共和国国旗の毀損事件。いわゆる「長崎国旗事件」です。くわしくはwikipediaを参照されることをおすすめします。
     
     この事件は、長崎市のデパートで行われた日中友好協会長崎支部主催の「中国切手・切り絵展覧会」会場につるされた五星紅旗(中国の国旗)を右翼青年(28)が引きずり下ろしたものです。中国は怒りました。しかし、旗自体が破れなかったこともあり、犯人は軽犯罪法違反で科料500円の判決を受けました。
     
     当時日本が承認していたのは台湾(中華民国)で、中華人民共和国とは国交がありませんでした。したがって、当時の日本では五星紅旗は刑法で規定された「外国国章」にはあたりません。また、国交のある国のものでも、wikipediaによると、当時の朝日新聞の社説は「保護すべき国旗とはその国を象徴するものとして掲揚される公式の国旗のみを指し、装飾としての万国旗や歓迎用の小旗もしくは私的団体の掲げる旗は含まれない」として、中国の反応が過激すぎると批判したそうです。

    五星紅旗 甘栗 
     
     ところが、中国側の怒りはおさまりません。当時の日本政府ならびに当時の岸信介首相を厳しく批判し、陳毅外相が「日本との貿易を中止する」という声明を出しました。これは口先だけではありませんでした。対中鉄鋼輸出契約が破棄され、中国からの天津甘栗、ウルシなどの輸出がストップされました。「労働者・農民の国」によるこの制裁で、日本の零細な商工業者や労働者が職を失いました。

      長崎国旗事件(1958) 大使公用車襲撃事件(2012)
    対象 五星紅旗(装飾) 日本国旗(公式国章)
    犯行 引きずり下ろし(破損なし) 走行妨害・強奪
    反応 経済制裁(貿易中止) ???


     今回、日本はどう対応すべきでしょうか? それには世論の、事件に対する理解が反映されます。過剰な反応は慎むべきです。かといって、これからの日中間の緊張は「下手に出ていれば、いずれ丸くおさまる」性格のものではありません。適切な対応が望まれます。
     

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    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
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