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    王悦ちゃん見殺し事件 中国的競争社会 - 2012.01.09 Mon

    多くの人が「人助けをすると、損をする」と考え、「自分の子どもさえ守ればよい」と、わが子を守れなかった王悦ちゃんの両親を暗に非難さえしました。とはいえ、彼らも「人助けをしない自分」にやましさを感じているのは明らかでした。いったいどうしてこんなことになったのでしょうか? 

    早朝から、深夜まで中国の南半分を飛行機や高速鉄道を使って神風取材をしながら私は考え込みました。そのヒントを得たのは昨年7月の高速鉄道衝突脱線事故のその後を取材に行った浙江省温州で、でした。高速鉄道事故のその後は、1月6日にやはりテレビ朝日「スーパーJチャンネル」で放送しました。

    鉄道 


    いま温州の事故現場には何も起きなかったかのごとくです。慰霊碑が建てられたわけでもありません。むしろ「なかったこと」のようにさえ思える現状です。中国政府は年末に事項調査報告書をまとめましたが、原因究明は日本人の感覚からいえば、不十分です。高速鉄道に乗ってみると、中国人乗客は何もなかったかのように乗っています。温州は日本人にも温州みかんの名で知られる古くからの商業都市です。主要な輸出品は靴類、衣類、めがね、家具、革製品とか。たしかに驚くほどたくさんの靴製造会社がありました。しかし、目を奪ったのは温州の空港から市内へ向かう幹線道路を走っているときに見た光景です。信じがたいほどの数の工事現場。北京、上海の建設ラッシュのころは、それでも、すでに完成した都市構造、手付かずの広い地域がありましたが、温州では町の大部分が土木工事現場のようなすさまじさです。そのほとんどが高層マンションです。そして、すでに完成したと見られるもののほとんどがまだ空き家なのです。果たしてこれらのマンションが未入居のままになったら? それは中国の建設バブル、住宅バブルの崩壊です。中国人の成長の夢が崩壊するだけでなく、世界経済にも巨大な負担を負わせることにもなるでしょう。それでも、中国は突っ走るのです。

    建設現場 


    私が今回見た仏山、温州という地方都市は中国の行政単位としては「地級市」に分類されます。22の省、5つの自治区、4つの直轄市という最上層の行政区画と県、県級市という第三層に分類される行政区画の間に位づけられる地方都市です。地方都市といっても人口は数百万人あります。改革開放と経済膨張はいまや、上海や広州という超大都市だけでなく、「地級市」と呼ばれる地方都市に広がっているのです。それを示すなによりの証拠が高速鉄道網です。高速鉄道は北京、上海、広州といった超大都市を結ぶのに加え、省都級の都市、さらには地級市を結ぶ役割を果たしています。ジャーナリストの莫邦富さんのブログが書いているように、いまや経済発展はこうした地級市が主戦場となっているのです。ここでのヒト、モノ、カネの流れをスムーズかつスピードアップしなければ、13億人の中国人に先に豊かになった人の豊かさを押し広げるという小平のフィクションが崩壊し、経済成長そのものが挫折してしまいます。「成長を続け、それを地域的、階層的に拡大する」ことが中国共産党の支配の正当性となった以上、もうどうにもとまりません。仏山の巨大な問屋街、温州の建設ラッシュは、後ろを振り返らずに競争に勝ち抜いてとにかく前進するしかない中国経済の象徴でした。

    chizu  

    一方、これを中国人ひとりひとりから見るとどういうことなのでしょうか。キーワードは「競争社会」だと考えます。実は、中国人が本格的な競争社会にさらされたのはほんの最近、つまり改革開放以降なのです。中国5000年の歴史を通じて、王朝支配の時代には、ほんの一握りのエリートには官吏登用試験の科挙など世界有数の厳しい競争がありましたが、庶民はそれには無縁でした。辛亥革命を経て中国共産党支配になっても競争が一部の党周辺のエリートに限られていたのは同じです。いや、それどころか、文化大革命は競争否定のユートピア的平等主義のイデオロギーさえ持っていました。それが、小平によって一転、13億の民がすべて突然すさまじい競争のスタートラインに並ばされたのが改革開放です。

    小平 
    1978年、日本を訪問し、東海道新幹線に乗った小平氏
    「後ろから、だれかが鞭を持って、私を駆り立てているみたいだ」といった。


    競争社会は日本でも同じだと考える方もいるでしょう。しかし、現代中国の競争社会は2つの点で日本のそれよりもはるかに過酷です。日本でも、明治維新によって競争社会が始まったのですが、全国民を巻き込む本格的な競争社会が始まったのは敗戦後です。戦前の日本はゆっくりとした競争社会の助走期間とも考えられます。加えて、日本が競争社会に入ったころは経済のグローバル化はいまと比べればゆっくり進んでいました。しかし、中国が競争社会に突入したこの四半世紀というものは、経済発展の速度は比べものにならないほど急速です。まさに「ドッグイヤー」なのです。突然競争に参加しなければならなくなった13億の民。おまけに、豊かさの面でも、社会的地位の面でも、いま浮かび上がらなければ、将来回復が不可能なほどに、社会全体の発展速度が早いのです。スタートラインから我勝ちに走り出しているのです。転ぶものも出てきます。でも、転んだ人にかまっていたら、自分が損をします。自分だけではない。一家眷属、子々孫々までハンディを背負うことになってしまうかもしれないとしたら、なおさら人助けなどに、かかずらってはいられないでしょう。日本で受験競争が熾烈を極めたころの、いわゆる教育ママのメンタリティに近いものがあります。しかし、大きく違うのはその競争のスケールと程度の甚だしさです。「王悦ちゃん見殺し事件」はこうした社会風潮の中で起きました。


     

    ● COMMENT ●

    Re: ここから何が生まれるでしょうね

    ご指摘ありがとうございます。老眼鏡をかけて書くことにします。
    > なお、“改革解放”は“改革開放”に直された方が、記事全体への信頼感が増しますね (^_-)


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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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