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    人助けをすると損をする 中国社会のひずみ - 2012.01.07 Sat

     年末に中国を訪れました。前回訪れたのは北京オリンピックの以前の2004年ですから、もう8年前です。必ずいわれたのは「中国は1年たったらまったく変貌する。どんどんあなたの知っている中国ではなくなっていきますよ」ということでした。2004年は北京オリンピックと上海APECを控えた再開発ブームの真っ最中。北京では胡同が壊されていくのを惜しみ、上海では、周辺の古い住宅地がすべて取り壊された中にポツンと残された道観(道教のお寺)を訪れ、悲しい思いをしたものです。子どものころから、西遊記や三国志を通じて中国の歴史、文化に親しみ、道教やチベット仏教そして京劇のファンだった私には、東アジアの文化の源泉である中国の(私にとっての)よき面が失われていくのは残念なことでした。

    道観 道観内部 
    上海の白雲観 ポツンと残されていたこの道観はのちに、移築されきれいにされたとのことです。
    しかし、コミュニティとのつながりはどうなったのでしょうか?


    しかし、それは遠く離れ、あまり直接の関わりのない異国人の勝手な感傷です。改革解放以前の貧しかった中国人が、私たちが豊かで安全な生活をめざして努力してきたのと同様に、「坂の上の雲」をめざすことを悲しむのも身勝手というものです。他方、中国が日本を追い越して世界第2の経済大国になったいま、中国の急成長を無条件で祝福し、歓迎できるかというと、そうでもなくなってきた感じがします。年末にテレビ朝日「スーパーJチャンネル」の取材で、北京、上海以外のこれまで足を踏み入れたことのない都市を訪れて、痛切に感じました。

    それは昨年10月13日に起き、世界を驚かせた「2歳女児ひき逃げ見殺し事件」の取材で行った仏山です。車にひかれ、路上に血だらけになって倒れた2歳の女の子・王悦ちゃんを、もう一台の車がひき逃げし、王悦ちゃんのそばを18人もの人が助けもせずに通りすぎた衝撃的なできごとです。事件はyoutubeで世界に広がりました。「なぜこんなことがおきたのだろうか?」。日本での反応は大きく二つに別れていたようです。「経済成長のひずみの結果だ」という見方と、中国嫌いの人々の「やっぱり中国人は!」というものでした。後者の中国嫌いの人の反応はあまり真剣に追及する価値はなさそうです。一方、「経済成長のひずみ」とはいったいどういうことなのか? この疑問が中国取材の動機でした。そして。この取材でその疑問に答える糸口のひとつを見つけることができたような気がしました。




    仏山の事件現場は巨大な金属製品の問屋街です。その巨大さはたとえようもありません。仏山の問屋街に比べると、秋葉原の電気街は猫の額のようなものです。広州市の隣にあり、人口1000万人の広州市と連星のような関係にある人口600万人の仏山市は改革開放の中心である広州や深曙Vを商圏にするのみにとどまらず、長江以南の広大な地域の工業を支える問屋街だそうです。問屋街で働く人びとのほとんどは仏山育ちではなく、中国各地からの出稼ぎです。広東省の珠江デルタのまん真ん中なのに、人びとは本来の地元の言葉である広東語ではなく共通語である普通語で会話をします。共通語でないと意思が疎通できないほど地縁血縁が薄いのです。問屋街というと日本人は昔からの人々の濃いつながりを想定しますが、改革開放以後にできた仏山の問屋街にはそうしたミュニティはなく、人のつながりがまったく希薄なのです。でも、人のつながりが希薄になったのは中国だけではありません。それだけでは「助けなかった理由」はわかりません。

    見殺しにした人たちをはじめ、近隣の人々を取材するうちに、だれもがあげる「助けなかった理由」に行き当たりました。ときは2006年。仏山から遠く離れた南京でそれはおきました。停留所でバスからおりるとき、転んで骨折した65歳の女性を助け起こし、病院に連れていった27歳の男性が逆に加害者として訴えられ、中国としては巨額の損害賠償を払わされたという事件です。裁判所の判決の理由は「そんなこと(助けること)は普通しない。助けたのは男性にやましいところがあったからに違いない」という信じがたいものでした。

    急遽南京に飛び、取材してみると、「人助けをした人が逆に訴えられる」という事件が南京だけでなく、中国各地で多発していることがわかりました。仏山で、南京で、王悦ちゃん事件に関わりのない人たちをふくめて「助けたいのはやまやまだけど、そんなことをして自分に災難が降りかかってきてはかなわない」と口をそろえたのはこのためでした。

    地図 
    人助けをした人が逆に訴えられる事件が各地で起きた

    王悦ちゃんの場合は、19人目に通りかかった廃品回収の女性が王悦ちゃんを助け起こし、母親を呼びました。この女性には失われた「人の心」があったのです。しかし、8 日後に亡くなった王悦ちゃんの両親とこの女性にその後起こったのは「この町にいられなくなる」というこれまた信じがたいでできごとでした。地元のテレビが事件を報道すると、ひき逃げをした2台の車の運転手は逮捕され、処罰されました。ところが、両親と助けた女性には、ネットや匿名の電話で「カネ目当てなんだろう」という非難・中傷が殺到したというのです。私たちのスタッフは助けた女性の携帯電話番号を入手し、息子さんの話を聞くことはできましたが、ついに、「人の心を持った」この女性の話を聞くことはできませんでした。

    取材をした多くの人が「人助けをすると、損をする」と考えるばかりか、「自分の子どもさえ守ればよい」と、我が子を守れなかった王悦ちゃんの両親を暗に非難するのでした。(つづく)




    ● COMMENT ●

    ご指摘ありがとうございます

    そうでした。訂正します

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    北京語は標準語ではありません。あくまで北京の年配者が話す方言です。
    彼ら中国人が習うのは普通語です。政府が作った標準語です。


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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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