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    不思議な言葉遣い 菅首相の福島原発事故 - 2011.05.10 Tue

    東日本大震災から11日で2か月。巨大地震と大津波の被災者、そして東京電力福島第1原子力発電所の事故による被害者の救済のカレンダーが先行き不透明のままにとどまっている一方で、菅直人首相にとってはこの日付けはとても重要なようです。中部電力浜岡原子力発電所の全面稼働停止で中電をねじふせた勢いをかって、10日の記者会見では、首相は「事故の収束のメドがつくまで首相としての歳費は6月から返上する」ことを表明しました。

    ●安全と安心

    浜岡原発 
    浜岡原発

    浜岡原発の全面停止要請にあたって、菅首相は「国民の安全と安心のため」と説明しました。「安全」は科学的な根拠にもとづいて判断することができます。この場合は「30年以内にマグニチュード8以上の東海地震が発生する可能性は87%」という数字で説明されました。しかし、「安心」は人の心を根拠とするものだけに、客観的な基準にはなりにくいものです。「安心」を持ち出されては、中電はぐうの音も出ません。中電は9日に停止を決定しました。しかし、「安心」をいうなら、停止が浜岡原発に限定されるのは納得がいかないと思う人が多いでしょう。早速、全国のほかの原発立地にも波紋が広がっています。それだけではありません。「停止」はあくまでも中電が自主的に決定したものです。総理大臣は要請しただけです。結果の責任は中電にあります。ですから、菅首相は浜岡原発停止が「英断」であるかぎりその果実を享受します。こうしたやり方は実はあまりフェアとはいえません。前回のブログで、「菅首相は錦の御旗をわしづかみにした」と表現したのはその意味でした。

    ●歳費と給与のことばのあやは?

    一方、「歳費の返上」ということばを聞いたとき、私は違和感をおぼえました。「歳費」ということばは総理大臣の報酬には普通使わないことばだからです。総理大臣の報酬は「特別職の職員の給与に関する法律」で規定されます。一方、「歳費」は国会議員の報酬を意味し、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(歳費法)」によって定められています。そして、歳費法は「国会議員である特別職の公務員の給与が歳費を上回る場合は、その差額を歳費に上乗せして支給する」としています。現実は、議員「歳費」は返上せず(できない)、上乗せ分の「給与」を返上することなのに、菅首相は会見で「総理大臣としての歳費」という言葉遣いをしました。行政の長ともあろうものが、「給与」と「歳費」の違いを知らなかったのか、それともなにか意図があったのか、極めて不思議な言葉遣いでした。

    10日菅首相 
    10日、記者会見する菅首相

    ●原発を国策とした政府の責任

    そして上乗せ分の「給与」返上の理由としてあげたのが「今回の原子力事故、直接の原因は地震、津波によるものでありますけれども、これを防ぎえなかった責任は事業主であります、事業者であります東電とともに、原子力政策を国策として進めてきた政府にも大きな責任があるとこのように考えておりまして、その責任者として、本当に国民のみなさんにこうした原子力事故が防ぎえなかったことを大変申し訳なくおわびを申し上げたいと思います」でした。

    ●なし崩しの国策

    これも不思議な言葉遣いです。「原子力事故を防ぎえなかった」第1の責任を東電としながらも、「原子力政策を国策として進めてきた政府にも大きな責任」があるという言い方は一見極めて謙虚です。しかし、長らく原子力政策を国策としてきたのは自民党政権でした。菅首相は野党時代にそれを批判してきたはずです。形式的にいえば、非の大半は過去の政権にあります。もう1つ不思議なのは、民主党政権が政権奪取後、なし崩しに原発を国策として認めてしまっていることです。「反原発」の意思を込めて民主党に投票した人たちはどう受けとめているのでしょうか。

    ●求められるのは対策の実

    切手 
    原子力平和利用は1957年に遡る

    十分な安全対策を講じずに原発を国策としてきたことについては、自民党も民主党も同罪です。そして、いま問われているのは原発を国策とした「過去」ではなく、3月11日以降の破局=制御不能な原子炉=を安定した状態にする効果的な対策を講じてきたか、講じているか、これからも講じることができるかです。そして、国民の求めているのは「給与返上」などというチープなパフォーマンスではなく、「対策の実」です。 菅首相が自負するように「ほかのだれがやっても、これ以上はできない」のなら、給与を倍にしてもよいぐらいです。

    ●福島原発安定までには数十年?

    10日、日本記者クラブで講演した松浦祥次郎・元原子力安全委員会委員長は「福島第1原発の4基の原子炉から、各燃料を完全に取り出したうえで、安定した状態にこぎつけるには数十年を覚悟しなければならないかもしれない」と警告しました。しかし、各新聞のweb版を見る限り、10日の記者会見で菅首相は、浜岡などについては多弁でしたが、福島原発事故については、事故調査委員会の設置や東電による賠償のスキームにはふれたものの、「東電が示している工程表などもきちんと進んで、完全に原発の事故がもう新たな放射性物質を出さないで、冷温停止になる目途がつけば……」とあくまでも東電を盾にして、政府としての明確な対策、見通しを示しませんでした



    ●次第に広がる無関心の中で

    事故発生以来、2か月がたち、「あすにも放射能雲が首都圏を襲う」といったたぐいのパニックはさすがに影を潜めました。逆に恐いのは、「原発事故被害は福島県の問題」といった無関心が次第に広がっていくことです。事態は単純な白黒でなく、複雑に錯綜し、何が前進で何が後退か、素人にわかりにくくもなっています。いわば逢魔が刻というような状態です。政治家や官僚が跳梁する絶好の機会でもあります。そうした中、菅首相は「現在、ここにある危機」から目をそらさせるように、「浜岡」や「給与返上」というパフォーマンスを繰り広げているように見えます。次の「魔球」はなんでしょうか?
     

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    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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