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    借り暮らしの菅首相 浜岡原発全面停止要請に透けてみえるもの - 2011.05.07 Sat

    連休最後の谷間での唐突なできごとでした。菅直人首相は6日夕の記者会見で、中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)のすべての原子炉の運転停止を、海江田万里経済産業相を通じて中部電力に要請したと発表しました。中電は7日緊急の取締役会を開いて対応を協議しましたが、中電にとって、また中部経済にとってあまりに大きな問題なため、議論持ち越しになりました。しかし、法的強制力はないにしても、総理大臣の要請の意味は重いものがあります。また、結論持ち越しに対する批判も強まるでしょうから、いずれは要請を受け入れることになる公算が大といえます。

    浜岡原発 
    中部電力浜岡原子力発電所

    ●「評価」から「留保」まで多様なメディアの反応

    7日の全国紙各紙の反応を社説で見ると「首相の決断を評価したい」(毎日)「首相の停止判断は妥当だ」(朝日)「やむをえない」(読売)と「評価」「妥当」「やむをえない」の濃淡はあるものの、朝毎読3紙は肯定的です。他方、日経は「念のために止める考え方は理解できる。しかし突然の発表に国民はかえって不安を募らせたのではないか。夏場の電力不足への備えは大丈夫か」、産経は「日本のエネルギー政策に及ぼす影響について『熟慮』があったとはみえない。唐突な決断である」と「留保」に重点が置かれています。日経が国民生活や経済への悪影響を主に懸念するのに対し、産経は、民主主義の手続き軽視に重点が置かれています。

    ●浜岡原発全面停止は錦の御旗

    desaster  
    東電福島第1原発の惨状

    しかし、真っ正面から批判する新聞がないのは、あらゆることに後手後手に回ってきた菅首相が突如「原発の安全」という錦の御旗をわしづかみにしてしまったからでしょう。いくら各種世論調査で消極的支持を含め原子力発電の維持が多数を占めているとはいえ、東京電力福島第1発電所の惨状と周辺住民の苦境を目の当たりにしている現在、もっとも危険といわれている浜岡原発を摘出しての「停止判断そのもの」に異を唱えるのは、新聞にとっても世論を敵に回すことになるからです。

    ●2本社説に表れた全国紙各紙の本音

    しかし、新聞の論調は文章だけでは判断できません。「評価」から「留保」まで割れている各紙ですが、いずれも「浜岡原発社説」の扱いは2本ある社説の1つです。5紙の社説は平時には2本掲載されます。そして、題材がエポックメーキングな大きな意味を持つときには社説は2本分の行数を1本にまとめた「1本社説」とします。その意味で、菅首相の要請を各社は平時のニュース、それも決定的なものでなく、「途中経過」と見なしているようです。それかあらぬか、もっとも積極的な毎日ですら、「評価したい」と「したい」という留保をつけています。

    ●早とちりはできない

    鳩山由紀夫 

    一昨年夏、国民の期待を担って登場した民主党政権はこれまで、その期待を裏切ってきました「埋蔵金」や「マニフェスト」は絵に描いたモチでした。「国外、少なくとも県外」と普天間基地移設問題で沖縄県民の期待を煽った鳩山由紀夫前首相本人が「辺野古での決着」を事前にアメリカに伝えていたことがwikileaksによって暴露されました。「クリーンな政治」の約束は小沢一郎元代表の資金疑惑で台無しになりました。東日本大震災の結果、巨大地震、巨大津波、原発事故の三重苦の中で菅政権の対応は「熟議の政治」とは縁遠い「場当たり対応」の連続です。学校での放射線被曝限度引き上げの問題点を指摘して辞任した小佐古敏荘・東京大学教授が今月2日に予定していた記者説明会が首相官邸から「老婆心ながら、守秘義務があると言われた」ことで中止に追い込まれた1件(一部のみ報道)は「公開性、透明性」どころか、都合の悪いことは「守秘義務」をふりかざして権力的に押さえ込む体質さえのぞかせました。こうした経験からすれば、浜岡停止も今後どのように推移するかは未知数です。7日朝の民放番組に登場した細野豪志首相補佐官(原発担当)はさっそく、浜岡以外の原発に関しては、「原子力政策全体をやめようということではない」と強調したそうです。そうしてみると、全国紙各紙の「留保」は無理からぬところがあります。「今後を見よう」という姿勢が2本社説の1つという扱いに透けてみえます。新聞とりわけ社説には見通しがぶれないことが重要だからです。

    ●浜岡原発全面停止が「英断」と判断されるケース

    大津波 

    ところで、今回の「浜岡原発全面停止要請」は英断なのか、愚策なのか、それとも何か別のものなのでしょうか?「英断」という評価がもっともあざといかたちで表れるのは、中電が高さ15㍍の防潮堤を完成する時期(2年といわれます)の間に、核燃料を完全に撤去したもぬけの殻の原発を大津波が襲う場合です。しかし、菅首相を含めそんな事態を望む人は1人たりといないと思います。もう1つの可能性は、浜岡原発の完全な安全を確保したうえで、大地震、大津波が襲う前に、代替エネルギーへの転換を達成することです。この場合は、エネルギー転換の達成までのかなり長い期間「目に見えない安全」を確保するための電力不足やそれに起因する国民生活の不便や経済への悪影響に耐えなければなりません。おそらくそれは菅首相の任期中には実現しないでしょう。


    ●「愚策」とされかねないさまざまな状況

    計画停電 
    計画停電で閉鎖され照明も暗い改札口

    一方、「愚策」といわれてしまう材料には事欠きません。浜岡原発の地元御前崎市長からは、「(地元の)意見を聞いたのか」という批判が出ています。また、菅首相は対象を浜岡原発に限っていますが、電力政策の全体像を明らかにしないままの突然の発表のゆえに、全国で運転停止中の原発32基の再稼働が困難になるだけでなく、今後定期点検に入る原発も含めすべての原発が稼働できなくなる可能性が指摘されています。これは、東京電力管内への他電力会社からの援助給電を不可能にするにとどまらず、東京電力、東北電力管内だけに限られていた電力不足が全国に波及することを意味します。それが国民経済、国民生活にどのようなマイナスの影響を与えるかについて、首相官邸が熟慮した形跡はいまのところみえません。また、原発を持たない沖縄電力を除く全国9電力会社の経営が維持できるかどうかの問題にもなってきます。

    ●唐突な意思決定を強いた「菅降ろし」

    小沢釣り 
    千葉沖の魚の安全性をアピールのため、自分たちの釣った魚を味わうパフォーマンスも

    いずれにせよ、「英断」か「愚策」なのかの判断を下せるまでには相当の時間がかかります。新聞各社の「判断留保」はその結果ですが、その一方で、短期的に極めてわかりやすい「その他」の要素があります。ゴールデンウィーク中に高まっていた「菅降ろし」の潮流です。今回の「菅降ろし」は自民党・公明党といった野党からのものだけでなく、小沢元代表や鳩山前首相ら民主党内の動きが合流しかねない様相でした。産経新聞7日朝刊の「反首相勢力には『クセ球』…」という記事はその裏を解説しています。5月2日に福島みずほ社民党党首に「ぜひ浜岡原発を止めてくださいね」と迫られたとき、菅首相は「ヒャッハッハッ…」と笑ってごまかしたというエピソードを紹介したうえで、小佐古・東大教授の内閣官房参与辞任後、反首相勢力が原発事故を「菅降ろし」の軸に据えつつあったことが意思決定の背景にあったと指摘します。

    ●借り暮らし、自転車操業の政権維持

    菅直人浜岡 
    浜岡原発全面停止要請を発表する菅首相

    今回の意思決定の背景やプロセスは今後、マスメディアの検証の対象となりますが、それには時間がかかるでしょう。一方、「(原発事故対応は)このままではいけない」と、ゴールデンウィーク明けから政府批判を強める意向を明らかにしていた小沢元代表にとってみれば、「浜岡原発全面停止」はその出鼻をくじく一撃でした。小沢氏らの「倒閣戦略」は見直しを余儀なくされるでしょう。その間、政権は延命されます。また、今回の発表がマスコミ各社の5月の世論調査開始の直前に行われたことも注目に値します。「浜岡全面停止」で支持率を向上させることができれば、仏ドービルで5月26日、27日に行われるG8サミットに出席できます。サミットでの「英断評価」を背景に帰国し、大震災対策の2次補正予算を先送りして通常国会を閉会してしまえば、内閣不信任案を封じ込めることができます。「借り暮らしのアリエッティ」ではありませんが、時々に支持率を借り暮らしの無鉄砲な自転車操業にせよ、短期的には政権は維持できるという寸法です。長期的な構想で日本の再創造を始めなければならないときなのにです。


     

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    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
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