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    どっちがほんと? 原発周辺「住めない」発言の周辺  - 2011.04.18 Mon

    菅直人首相が先週、「福島第1原発周辺は10年、20年住めない」と発言した、あるいは発言しなかったということが物議をかもしました。さまざまな議論があり、このブログでもふれましたが、新聞やテレビの報道だけではよくわからない点があるはずです。メディアは最初「菅首相がそういった」と報じました。そして、次に「菅首相は『菅首相がそういった』ということを否定した」と報じました。さて、どっちなのでしょうか?メディアが誤報したのか、それとも菅首相らがごまかしているのか? よくわかりません。それを理解するには、総理大臣と総理番記者の関係を知る必要があります。

    ●首相動静をチェックする首相番記者

    菅直人松本健一  
        菅首相     松本健一内閣参与

    問題の発言は、13日に松本健一内閣官房参与が菅首相を訪問した席上であったものです。もし、ここに首相秘書官などが同席していれば証人になりえますが、2人だけの会談だったら、その内容は当事者以外には知るよしもありません。ところが、新聞あるいは通信社の記事はその内容を報道します。総理大臣を訪問する人の名は毎日、新聞の首相動静に記録されます。首相番記者(主要メディアが原則1人を常時はりつけています。したがって番記者は常時複数です)は首相を訪問する人が執務室に入る前に「どういうご用事ですか」と尋ね、訪問を終えて出てきた人に「何を話されましたか?」と尋ね、その内容を自社の内閣記者会の先輩にQ&A形式で報告します。それが記事になります。「なぜ、そんな権限があるのだ?」あるいは「大きなお世話だ」と思う人もいるかと思いますが、これはメディアの重要な役割です。

    ●首相番記者の国民に対する責務

    記者団 
    政治家をとりまく記者団

    少なくとも自民党政権以来、内閣記者会と内閣官房の約束ごとで、首相には単独インタビューは許されないことになっています。首相の執務の邪魔になるからです。また首相記者会見もしじゅう行われるわけではありません。そのかわり、①首相は廊下を移動中などの場合は番記者は首相に質問できる②首相を訪問した人には出入りの際に上記のような質問ができる、と認められてきました。これは、国民の知る権利の代行であると同時に、首相側としても情報開示の機会であり、憶測を排除できるという利点があります。しかし、新しい首相官邸ができてから、また民主党政権になってから①の機会は極めて制限され、一カ所に立って記者団の質問に答えるいわゆるぶら下がりも大震災以来ほとんど行われなくなっています。このため、②は国政の動向を国民が知る重要な窓口なのです。

    ●番記者は金魚のフン?

    番記者というのはかつてもいまも、国民からは理解されない、ときには軽蔑される代名詞になっています。ぞろぞろ金魚のフンのように権力者に付き従い、権力に迎合するものと見られてしまうからです。私は30余年前、政治記者のかけ出しのとき、首相番記者になりました。総理大臣は故福田赳夫さんでした。朝から夜まで、ただただ首相を追いかけ回し、質問、質問、質問、報告、報告、報告です。早朝、深夜には政治家の家を訪ねて取材する「朝回り」「夜回り」がありますから、若者であっても体力的に堪える肉体労働です。おまけに「金魚のフン」ですから、いやな仕事でした。しかし、そのうち仕事の重要性に気づきます。国政トップの日々の動静や考えを国民に伝える最前線の仕事ですし、最高権力周辺の人間模様を勉強できるからです。当時の番記者の仕事を調べるうち、youtubeでなんと私自身の番記者ぶりを伝える映像を発見しました。




    ときは1977年のダッカ日航機ハイジャック事件。ビデオ開始後22秒ごろから約10秒間の映像、福田さんの左前を歩く、メガネ、グレーの背広、茶色のネクタイの記者が私です。一生懸命質問しています。この直前だと思いますが、有名な「人命は地球より重い」という発言が出たのは番記者相手でした。その瞬間にはカメラはありませんでした。私の記憶では、旧官邸の小食堂で対策会議を主宰していた福田さんがトイレに出てきたのをつかまえたときの発言でした。

    福田 

    福田さんはとても気さくな人で番記者の質問に丁寧に答えてくれました
    。トイレに行くときにつかまえる手法は私もよくとりました。連れションしながらでも、若造の質問に答えてくれました。ときには「番ちゃん、番ちゃん」「懇談、懇談」と秘書官室前の小さな待合室に私たちを呼び込んだものです。それは、奥様に禁じられていたタバコがほしいときでした。「おい、萩谷くん(ほかの人のときもありました)タバコもってるかい?」。えたりやおうと、タバコの箱を差し出すと右の耳に1本、左の耳に1本はさんでから、やおら別の1本をプカリ。そして、即席の背景説明です。目的がタバコだったのか背景説明だったのかは微妙でしたが、人間くさい総理でしたし、何よりも「ほんとうのことはいわないにしても、ウソはいわない」福田さんは取材した記者たちに敬愛されていました。ぶら下がりをいやがる昨今の首相とはちがいました。

    ●ウソかマコトか、矛盾した報道

    ぶら下がり 
    大震災以後ますますなくなったぶら下がり(写真は麻生太郎内閣当時)

    しかし、現実に執務室で首相が訪問者と何を話したかはブラックボックスです。そこで、訪問者の出入りの際に質問し、首相に質問し、それが重要なことであれば報告を受けた先輩記者がウラをとりに走るのです。今回の松本参与と菅首相の会話もそうです。松本参与も名誉ある公人のはずですからウソはつかない、という仮の前提で記者はその発言を発言通りに記事にしました。ところが、ここからが通常のコースと違いました。官房長官が出てきて、松本参与の発言は誤りだとし、松本参与自身も誤りだと訂正しました。内閣の大番頭としての官房長官の発言は重いですから、これを無視するわけにはいきません。そうなると、読者は混乱します。「どっちなんだ」と思うのは当然です。しかし、密室の会話に立ち会っていたわけではないマスメディアが客観報道の前提に立つ限り、矛盾しても両方伝えることになるのです。

    ●ICレコーダーは知っている

    今回の松本参与発言について、当初私は「あまり重大な内容なので、菅首相は松本氏を使って観測気球をあげたのではないか」と考えました。反響がネガティブだったら、松本氏のミスということにするという筋書きです。首相官邸関係者に探りを入れると「菅さんにそんな微妙な芸当はできない」という答えが返ってきました。私は「ああ、いっちゃったんだな」との感触をえました。その感触を補強する材料があります。私が番記者だった当時は、「番記者はメモをとってはいけない」という不文律がありました。眠気と疲れでいつもボーッとしている若い番記者たちは、首相、訪問者が去ると当事者が何をいったかをお互いに確認しあいます。つまり昔は誤りが混入する可能性がありましたから、あとになって都合が悪くなった当事者が「私はそんなことはいっていない」と否定できる余地があったのです。しかし、いまは違います。いまの番記者は高性能小型のICレコーダーを使っています。松本参与の発言の内容は99%まちがいなく伝えられているはずです。

    ICレコーダー 

    ●証拠があることの意味

    今回、いくつかのテレビの情報番組はICレコーダーの映像に重ねてこのてんまつを報じました。これは「証拠はあるんですよ」という意味です。マスメディア側の怒りの表現でもあります。ですから当事者たちは、どちらがいったかはともかく、「福島第1原発周辺は10年、20年住めない」という内容があったことまでは否定はできません。そこで、「菅首相の発言ではなく、松本参与の発言だった」とするのです。しかし、ここにも関門はあります。ジャーナリストにとって5W1Hはいのちです。番記者全員が松本発言の「主語」を間違えたとは考えにくいところです。逆に松本氏自身が「主語」をまちがえたとしたら、そんな軽率な人が内閣参与として国政に関与するのはいかがなものでしょうか。一方、単なる間違いでない場合、意図的な歪曲ということもありえます。最高権力である首相に接する人はときに、自分の権勢を示すため、あるいはそれによって自分の利益をはかるために、自分の主張を首相の主張として記者に吹聴することがよくあります。ですから、記者たちはそうした歪曲を排除して事実を洗い出すことに力を注ぎます。かけ出しの多い番記者は首相番の任務を通じてその修行をしているのです。番記者をなめてはいけません。もし、菅首相を出汁に自分の主張を吹聴したのだとしたら、松本参与には国政に関与する資格を疑われます。

    ●歴史への責任を感じるなら

    福山 
    原発事故の計画避難区域・福島県飯舘村での住民説明会で陳謝する
    福山哲郎官房副長官

    さて、菅首相は自ら「福島第1原発周辺は10年、20年住めない」といったのでしょうか?いまのところ、それは否定されています。しかし、事柄は重大です。福島県選出の玄葉光一郎・民主党政調会長(国家戦略担当相)がいうように「仮にそういうことが本当なら、科学的な根拠をもって、しかるべき立場の人がしかるべき時期に万感の思いを込めて、土下座をして話をしなければならない重大な問題」です。そして、菅首相、松本参与が被災者の方々と歴史に対する責任を意識しているなら、官房長官にまかせず、首相ご本人がきちんとてんまつを説明し、理解を得る必要があるでしょう。松本参与の名誉がかかっている問題でもあります。もし、メディアの側の誤報ならおわびして訂正する必要があるのは当然のことです。

    追記)菅首相は18日の参議院予算委集中審議で、原発周辺の長期間困難発言について「事実無根だ」とあらためて否定しました。初めての公式の場での本人の否定なので、記録しておきます。



     

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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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