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    科学の活用と誤用(2) 科学的知見と地震、原発事故 - 2011.04.14 Thu

    大規模余震が相次いだ12日、東日本大震災の震度1以上の余震は126回に達したそうです。3月11日以来最高の記録です。このままではどうなるかと思っていた13日には回数は大幅に減りましたが、14日の読売新聞web版は「東日本大震災の震源域の東側で、マグニチュード(M)8級の巨大地震が発生する可能性が高いとして、複数の研究機関が分析を進めている」という衝撃的なニュースを伝えました。「早ければ1ヶ月以内に津波を伴う地震が」という内容のためでしょうか、twitterの世界では14日午前中で2000を超えるツィートとなって広がっています。12日の朝日新聞では、島崎邦彦・地震予知連絡会長が「地震予測のすべての枠組みが崩れた。すべて、は言い過ぎかもしれないが、三陸沖での基本的な想定の枠組みが根本から間違っていた。ここでマグニチュード(M)9はないと考えてきた」と述懐しています。さらに、「地震の長期予測や予知は不可能で、東海地震の予知研究はやめるべきだ」などとする、ロバート・ゲラー東京大教授(地震学)の論文が14日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載されました(読売web版)。

    ●「政府のいってきたことと違う」という怒り、不安

    菅直人 edano 

    東京電力福島第1原子力発電所の事故については、「レベル7」への引き上げのショックもさめやらぬのに「枝野幸男官房長官はレベル7を先月末には知っていた」ことが表面化しました。また、菅直人首相が、面会したブレーンに、原発事故の避難対象区域住民が「当面住めないだろう。10年住めないのか、20年住めないのか」と話したという情報が出回りました。関係者の怒りを買ったことを知り、これは面会者のウソあるいは間違いということにされましたが、「居住できない」ということもさることながら、これまで政府がいっていたこととちがうではないかということが国民の怒りと不安を呼んでいます。

    ●不安を培地にあやしげな言説が横行

    巨大地震、巨大津波、そして原発事故という未曾有の災厄に見舞われる中で露呈したのは政府や専門家がいっていたことが次々と、新しい事態によって覆されていくことです。予測や判断の誤りだけでなく、それは政治家の政治的利害に発する副次的災害としても、被災者や国民にふりかかっています。こうした中で、政治家や専門家に対する怒りや不安を培地に、怪しげな言説がまかり通っています。その中には、プルトニウムへの恐怖を煽るものや、すべてを巨大企業東電と政府・マスコミとの癒着に帰するものやカルトまがいのものまであります。これにマスコミ不信+ネット過信が加わって旧約聖書のモーゼとアロンの逸話にある混乱を連想させてしまいます。

    アロン 
    金の子牛の礼拝

    ●科学的知見に基づいた結果

    庶民の疑心暗鬼の方が科学的知見より信ずるに値するかのようです。13日、日本記者クラブで会見した石原信雄元官房長官への質問の中には、「すべては、原発を推進してきた自民党に責任があるのではないか」というものもありました。石原氏は「それぞれ、その当時の科学的知見にもとづいて、国民の安全を守れるという前提で採用してきた。現時点ですべて自民党の責任というのは根本的な答えにならないし、建設的でない」と答えました。「すべて自民党が」というのも、パニック状態の中で人々が逃避しやすい回路ではありますが、現段階では石原氏のいうとおり建設的ではありません。

    ●科学的知見は諸刃の剣

    クリスマシン 

    ここで、私は「科学的知見」ということばに注目したいと思います。この言葉は、ハンセン病訴訟やミドリ十字血液製剤訴訟など、医療、薬害、公害訴訟のたびに出てきたことばです。それによって被告が断罪されたり免罪されたりしてきました。かんたんにいえば、「その当時の科学の発展のレベルでは害が予測できたか、予測することはできなかったか」です。それを分かつのが「科学的知見」の水準です。科学的知見は人を守る盾にもなりますが、科学の進歩の過程のある段階では、誤った判断が「科学の名」で正当化されるだけでなく、権威をもって、さらには権力によって国民に強制され、害を与えうるということです。

    ●仙丹だって当時の科学的知見の成果だった

     中国の古代には、仙人になるための仙丹に含まれるヒ素や水銀によって王侯貴族すら命を奪われた例があります。それが当時の科学的知見だったのです。まじないが医療という社会はまだ地球上には存在しますし、現代社会でもたとえばA型肝炎の病人食についていうと、戦後しばらくまでは、「おかゆ」が勧められましたが、その後、「高タンパク高脂肪」、そして、そこから高脂肪が落ちていきます。肝炎そのものもかつては、ひとからげに「黄疸」と呼ばれていましたが、ウイルス性のものは「流行性肝炎」になり、その後、A型、B型、C型、D型、E型、G型、TT型などに分岐していきました。科学的知見の発達によるものです。そして、科学的知見の及ばなかったものが、血清肝炎などの被害者を生んできました

    始皇帝
    秦の始皇帝は仙丹に健康をむしばまれたという

    ●科学的知見は歴史的存在、修正され乗り越えられる

    いま私たちが直面している地震の脅威や原発事故についてのこれまでの科学的知見はしょせん歴史的な途中経過です。そして、私たちはそれを過信しすぎたのです。だからといって、原子力平和利用そのものをまったく葬り去ってしまうのは、ラッダイティズム(進歩に背を向ける打ち壊し運動)かもしれません。現在の事故を収束するのも原子力平和利用を推進してきた科学的知見に基づく以外ないのです。科学的知見はつねに修正され乗り越えられていきます。いまやヒ素入りの仙丹が体によいと信じる人はほとんどいませんが、仙丹を練ることや西洋での錬金術は近代科学という子孫を生みました

    錬金術
    中世ヨーロッパの錬金術

    ●科学そのものが発展途上という認識が必要

    科学的知見が歴史的存在であるがゆえに、絶対に正しい科学的知見はありえないという不可知論に立つこともまた無責任です。肝要なのは、そのときそのときの科学的知見を絶対視せず、より将来を見通した判断をすることだったのでしょう。また、地震学や原子力平和利用の学問さらには医学を含む科学全体がまだ発展途上の段階にあることを踏まえることです。その意味で政治や経済、企業その他のリーダーとしてそうした奥行きと幅のある判断ができる人材を養成していくことが重要になっていくでしょう。
     


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    法政大学法学部教授
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