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    危機管理と情報公開 イスラエルの小さな話 - 2011.04.11 Mon

    きょう11日は東日本大震災から1ヶ月です。東京電力福島第1原子力発電所の状況は依然として予断を許しません。巨大津波の被災地の東北地方はいまだ復興が緒に就いたとはいえない状況です。きょう午後7時からのTV朝日の「たけしのTVタックル」は大震災後初めてのオンエアです。「あの大震災から1ヶ月…どうする!?復興&原発危機管理!」がタイトルで、私も出演していますのでぜひごらんください。

    ●心和む光景をどうぞ

    この1ヶ月、被災者の方々はいうまでもなく、直接の被災地以外の日本中が暗い気持ちにとらわれてきました。自粛するつもりがなくても、いまを盛りと咲き誇るサクラを楽しむ気持ちもなかなかうまれてきません。そこで、ブログのタイトル画像を変えてみました。草花に覆われた静かな内庭です。時にはレモンの実が枝から落ちる瞬間を味わうことさえできる、心を落ち着かせてくれる場所です。私の経験でももっとも落ち着く時間を与えてくれたこの光景は、イスラエル占領地東エルサレムにある歴史あるホテルの内庭です。その名はアメリカン・コロニー・ホテル。アメリカ(米国)、コロニー(植民地)と聞いて眉をしかめる方は早計です。このホテルの歴史を知れば、それは誤解だということはわかります。

    朝食 
    内庭での朝食
     
    ●パレスチナ紛争の焦点に位置するホテル

     いまは、スイスのホテル・チェーンが経営していますが、もともとはアメリカ人とスウェーデン人の巡礼の家族がここに定着し、キリスト教徒の巡礼のお世話をし、パレスチナ人とユダヤ人のために授産施設を運営するためにパレスチナ人の大金持ちが4人の奥さんのために建てた邸宅を買い取ったものです。2つの家族はそれをホテルにしました。

    創立者american-colony
    創立者の家族

    従業員はすべてキリスト教徒のパレスチナ人です。その中立性から、中東戦争当時も休戦交渉の場として使用されました。このため、西側のジャーナリストはここを取材拠点としてきました。私も朝日新聞の中東特派員だったころ、パレスチナ、イスラエル双方へのアクセスが便利なここに宿泊して取材対象と連絡をとったものです。また殺伐とした占領地取材からもどったとき、この内庭でトルコ・コーヒーやイスラエルのビールを飲みながら、心を休めました。その後、ウィーン、ボンの特派員になったときも、出張でこのホテルを利用するだけでなく、冬休みの家族旅行で訪れました。当時は、料金もいまの4分の1から5分の1でしたが、最近はちょっと手が出ないほど高くなってしまいました。さて、きょうはパレスチナ、イスラエル取材の経験の中から、いま日本で課題になっている「危機管理」に関する小さなお話です。

    ●「危機管理」とイスラエル

     「危機管理」という点でイスラエルほど、切実な経験をし、またノウハウを積んでいる国はほかにないと思います。西暦紀元直後、ローマ帝国によってエルサレムを追われたユダヤ人は世界中に離散(ディアスポラ)しました。ヨーロッパだけでなく、その末裔は南アフリカ、中国まで散り散りになりました。キリスト教社会では迫害、ポグロム(殺戮・略奪・破壊)の辛酸をなめました。

    holocaust

    そして20世紀に入り、ユダヤ人最大の苦難ホロコーストを経験したのち、第二次世界大戦後にようやく先祖の地に戻り、自分たちの国を建国しました。しかし、まわりをアラブ諸国に囲まれ、4度の中東戦争を経ても、国の存立は常に危機にさらされています。その「危機管理」は「疑念」を根本にしています。イスラエル女性と結婚してイスラエルに住んでいた知り合いの日本人(故人)はよく「疑り深い人たちですから」と弁解したものです。民族の歴史からは無理からぬところです。「水と安全はただ」と思ってきた日本人とは対極的です。

    ●24時間以内の総動員態勢

      
    イスラエルは小さな国です。地中海からエルサレムのあるジュデア丘陵、そしてそこから東に標高差1000メートル急に落ち込んだヨルダン川渓谷を経て、ヨルダンまで。東西は一番離れた地点間でも135km。車での走行時間は、西の地中海から東の死海までならば90分ほどしかかかりません。シリア、ヨルダンなどの機甲師団が侵入して、ひとたびジュデア丘陵への進出を許せば、地中海まで一瀉千里です。

    israel指導者
    イスラエルの隣国             イスラエルを敵視する指導者たち

    このため、イスラエルの危機管理の根本は2つ。「早期警戒によって敵の動向を知り、ジュデア丘陵を登る4本しかない道路で敵の機甲師団を阻止する」「予備役を召集し、24時間の間に総動員態勢をとる」ことです。「24時間内の総動員態勢」というのはかんたんではありません。東日本大震災で予備自衛官を召集するまで5日かかったことでも、それはわかります。国民皆兵のイスラエルは男女ともに兵役がありますし、兵役を終えたのちでも予備役に編入され、中年になるまで、毎年訓練のために召集されます。そうであっても、24時間で総動員態勢をとるのは簡単ではありません。

    IDF 
    女性兵士も総動員対象

    ●「おもしろく、真実に迫る軍放送」は危機管理に必要

    20年前、イスラエル軍の取材をしていたとき、興味深い話を聞きました。イスラエルには、ラジオの「イスラエル軍放送」があります。といっても、愛国精神を鼓舞する番組だけをやっているわけではありません。イスラエル軍放送のディスク・ジョッキーはその内容のおもしろさで人気が高いのです。そして軍放送のニュース番組はときに、政府高官や軍幹部の汚職や不正を暴きます。「なぜですか?」と尋ねた私に軍スポークスマンは、「24時間で総動員態勢をとるためには、国家危急の事態をできるだけ早く国民に知らせるのが軍放送の使命です。そのためには、常に国民に軍放送を聞いてもらうわなければなりません。魅力ある番組、真実を伝えるニュースを常に伝えるという定評を得ていなければ聞いてもらえません」。同時にイスラエルはシビリアンコントロールの徹底した民主主義国家です。

    IDF_Radio 
    イスラエル軍放送のスポーツ・レポーター

    ●危機管理には正確な情報公開が必要

    「なるほど」と思いました。東日本大震災後の、政府による国民への情報公開へ批判が集中しています。それはマスコミ報道への不満となって広がっています。こうした批判、不満がより正確で必要な情報公開につながるならよいのですが、「どうせ、たいしたことはない」と高をくくる人々から、「大変だ。大変だ」と煽られてパニックに近い人たちまでを押しなべると、巨大地震から1ヶ月たって全体としては情報摂取への意欲が減退しているように見えます。その一因は「不信」です。日本は憲法の前文にもあるように「平和」を前提とした国家です。幸い外敵の侵入こそありませんでしたが、東日本大震災は、その日本にも「有事」=大災害があることを思い知らせました。そして、その「有事」に国民の力を結集することに関して、政治のリーダーシップ、原発の安全対策から国民生活の端々に至るまで、「危機管理」に穴がいっぱいあいていたことがわかりました。そして、その根底には「情報公開」の欠陥があります。私たちが再建の道を歩むためには「危機管理」「情報公開」のあり方を正していかなくてはならないでしょう

    edano 

    ほんのわずかでも心を休めることができれば、と思ってブログの画像を変えてみたのですが、やはり「現在」からは逃れられませんでした。早く心和むような話をおつたえできるようになることを願っています。
     




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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
    出演番組
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