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    あちら立てればこちらが立たず 原発事故対策の悩み - 2011.03.29 Tue

    昨夜、東京電力福島第1原子力発電所の状況が動きました。主なものは原発敷地内から微量のプルトニウムが検出されたことと、原子炉の圧力容器にキズがあるかもしれないということです。いずれも、これまでの政府・東電の発表を見る限り、「あってはならないこと」です。これを受けて、twitterでは激しい罵り合いも展開されました。またustreamで中継された武藤栄・東電副社長の記者会見は250万人以上が閲覧し、そこのtwitterへの書き込みはめまぐるしく、動体視力の衰えた人には認識不能に近いものでした。こういうのをネット時代のパニックというのでしょうか。

    29日午前の状況(朝日新聞)
    29日午前 

     ●「止める、冷やす、閉じ込める」のもくろみ遅々として

    最悪ケースシナリオ」を提示したうえで国民一体でそれを回避する努力をするダメージコントロールの手法をとらない政府・東電にとって、昨夜明らかになった事実は「不都合な真実」です。たしかに再臨界や原子炉の水蒸気爆発に比べれば、まだ「不都合度」は高くありません。しかし、これまでとってきた「止める、冷やす、閉じ込める」という原子炉事故対策3原則は当初のもくろみ通りに進むのがむずかしくなりました。「あちら立てれば、こちらが立たず」という障害が度を強めたからです。

    ●プルトニウムは原発由来

    プルトニウムは、内部被曝すれば発がん性の高い有毒物質で、半減期もおそろしく長いやっかいものです。プルトニウム検出について、枝野幸男官房長官は29日朝の記者会見で、天然のものでなく「福島原発」由来のものと認めました。なぜ、そんなことがわかるのでしょうか?推測ではありません。核物質はどこで生成されたかを科学的に突き止めることができるようです。指紋を持っているようなものです。トム・クランシー原作の映画「トータル・フィアーズ(The  Sum of all fears)」(2002年)を見たことのある方には記憶があると思います。テロリストが米国フィラデルフィアで核爆弾を爆発させますが、核爆発の起きた爆心地から採取された核物質がアメリカのサヴァンナ・リバー原子力発電所で生成されたプルトニウムで、米国がイスラエルに供与した核爆弾由来であることを突き止めることによって米ソの全面戦争が回避されるという筋です。

    トータルフィアーズ 

    ●作業遅らせかねないプルトニウム検出

    今回は微量で大きな問題はないようですが、今後の問題は、福島原発からのプルトニウム放出は続くのか、またその量、さらに汚染される範囲がどこまでかです。東電は継続的な調査を約束しました。それにしてもこれまで、プルトニウムについて政府・東電は意図的と見えるほど口をつぐんできました。しかし、微量にせよ検出されたことで、プルトニウムがプルサーマル炉である3号機だけでなく、すべての炉の使用済み燃料の中にもあることが、すでに周知の事実であるかのごとく、あっさり言及されだしました。こうしたやり方こそが強い不信と不安を招くことがまだわからないのでしょうか? それはともかく、プルトニウムの値が今後さらに増えれば、「冷やす」作業の進行を遅らせかねません。ヨウ素131やセシウム137よりはるかに毒性の強い物質ですから、作業員をさらすのは危険になります。

    ●水のないはずのトレンチに高濃度汚染水

    もう一つの問題、「原子炉の圧力容器にキズがあるかもしれない」という懸念は、28日に2号機のタービン建屋から外へつながるトレンチ(坑道と立て坑)にたまった水から毎時1000㍉シーベルト以上の放射線が測定されたことで出てきたものです。通常運転時の沸騰水型原子炉は燃料棒の入った圧力容器で沸騰した水が高圧の水蒸気となってパイプを通じてタービンを回したのち、復水器で冷やされた後、原子炉に戻されます。復水器で冷却用に使われる水は原子炉←→タービンを往復する水とは完全に遮断されていますから、最終的に海に戻されても安全ということになります。これが回復を急いでいる本来の「冷やす」機能です。

    ●注げばあふれる

    トレンチ 
    (朝日新聞)

    しかし、現在までの応急冷却は、燃料プールや原子炉内への消防などのポンプによる放水や注水で行われています。自動車のエンジンに例えてみましょう。自動車の水冷エンジンはエンジン周囲を水で冷やし、ラジエーターでその水を放熱させてエンジンに戻します。しかし、その機能が失われるとエンジンはオーバーヒートします。それに外部から注水したり、放水したりすればエンジンは冷えますが、本来水がないはずのエンジンルームが水であふれます。原子炉の現状は外部からの放水・注水があふれ出して、本来は水のないトレンチに流れ込んでいる状況です。そして、そのあふれ出した水から高濃度の放射線が検出されたのです。

    ●作業遅らせる建屋、トレンチの汚染水

    原子炉にキズがなければ、トレンチの中の水はこれほどの高濃度の放射線は検出されないはずです。そこから放射性物質が漏れ出す原子炉のキズが懸念されるわけです。原子炉やタービン建屋あるいはトレンチの放射線は、原子炉本来の冷却機能を回復する作業を遅らせます。現場では汚染した水を復水器に戻すということを優先させています。また、あふれた汚染水は1万㌧にものぼるとみられており、これ以上水あふれないようにするにはを原子炉に注がれる水量と排出される水の出入りをバランスさせる必要もあります。しかし、原子炉に注がれる水量を減らせば、崩壊熱を押さえる度合いも落ちます。結果としてさらに燃料溶融を進行させてしまうことになりますし、圧力容器のキズを大きくする可能性があります。

    圧力容器 
    (朝日新聞)

    ●国民のモラルのダメージコントロールも必要

    このように「あちら立てれば、こちらが立たず」がさらに進めば、「制御不能」ということにつながりかねません。その道筋は、高校程度の理科の知識があればおおよそ推察できます。それをはっきりさせずに、原子力安全保安院は「かなり深刻な事態」と言い出しています。こうした政府・東電の情報公開のやり方は、国民に、安全とされていた防波堤が次々と破られているような感じを与えています。危機に立ち向かう国民のモラル(士気)を崩すものです。原発事故のダメージコントロールに加えて国民のモラルのダメージコントロールも必要です。それとも彼らは国民を、情報公開すればパニックに走るしかない愚民だと考えているのでしょうか?



     

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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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