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    中国は脅威か? - 2012.01.26 Thu

    十数年前のことです。私が朝日新聞のボン特派員だったころ、官庁街で旧知のドイツ外交官に会いました。中国屋でもある彼の質問は
    「日本にとって中国は脅威か?」でした。
    そのときの私の答えは、概略、
    「日本は有史以来、中国を侵略的な勢力と見たことはあまりない。13世紀の元寇はモンゴル王朝だった。日本は文字を始めとする文化を中国に負うている。戦前まで、日本の旧エリートは中国文化の影響下で育っているから、中国を武の国としてより、文の国と見ており、日清戦争当時をのぞいて中国を脅威と感じては来なかった。しかし、戦後のアメリカによる民主化の中で育ったこれからのエリートは別だ。アメリカの影響を受けて現実主義的に国際政治を解釈する新しいエリートが台頭するようになれば、日本の中国に対する見方が変わり、中国を脅威として見るようになるだろう」というものでした。

    21世紀に入り、改革開放の中国が経済的に急発展し、東シナ海、南シナ海で自己主張をするようになったいま改めて考えると、当時の私の考えは事態の半分しか見ていなかったという感があります。すなわち、中国の発展というダイナミックな展開を軽視していたのです。仮に日本の中国観が、私の考えた旧エリート的なものにとどまっていたとしても、最近の中国の急発展に伴う強烈な自己主張は、それだけで「脅威」としての現実性を強めていると考えざるをえないようです。

    その外的な現れは中国の軍拡であり、内的な現れは、中国国内で強まっている内圧に起因する膨張指向だと私は考えます。内圧は猛烈な競争社会になったことによるもので、前2回の「2歳女児ひき逃げ、見殺し事件」でふれましたので、きょうは外的な問題について考えてみます。

    1月1日の産経新聞のwebに興味深い記事が掲載されました。「防衛オフレコ放談」というコラムで、「日米安保破棄 公然と語られ始めた危機に処方箋はあるか」という刺激的なタイトルです。要約すると、「日本とりわけ沖縄が中国の弾道ミサイルの射程内に入ることで、米国にとって、日本が前進拠点としての安全性と効果すなわち米国にとっての日本の安全保障、世界戦略上の価値を失いつつある」ということです。「放談」と銘打っていますし、産経新聞も本紙に掲載しないという点での留保はあるのですが、こうした補助線を引いてみると頭の体操にはなります。

    この背景にあるのは、技術の進歩によるグローバル化は、軍事の面では経済や政治以上に進んでいるという現実です。有史以来たとえ中国が地球一の帝国であったときでも、海を隔てていただけで、中国の軍事力は日本にとって脅威ではありませんでした。しかし、第二次世界大戦後、とりわけ冷戦終結後、軍事技術が急速に進歩し、中国にそれを装備できる経済力が備わったことによって、事態は一変しました。中国の意図はともかく、目の前に隠しようもなく、あからさまに存在するようになった強大な軍事力は、それだけで客観的脅威です。これに「防衛オフレコ放談」の補助線を加えてみると、「中国の軍拡が進む中で、仮に日本周辺が戦場になるような事態に立ち至ったとき、アメリカが自国の本土に中国の大陸間弾道弾の雨を浴びることを覚悟してまで、日本やその周辺の友好国を守るか?」という疑問が成り立つことになります。

    この疑問は、1980年代の欧州中距離核ミサイル(INF)問題を想起させます。東西冷戦の最前線国家であった当時の東西両ドイツでのもっとも深刻な問題は、米ソの冷戦が熱戦に進展した場合、米ソが欧州だけを戦場に中距離核ミサイルを撃ちあうだけで戦争が終わるというシナリオでした。相互確証破壊(MAD)を回避して米ソは大陸間弾道弾を撃ちあわず、米ソ双方の本土は保全されるが、欧州とりわけドイツは核の焦土Euroshima(オイロシマ ヨーロッパとヒロシマの合成語)になるという恐怖でした。この結果、ヨーロッパを反核平和運動が席巻したのですが、歴史は幸いにその方向には進みませんでした。米ソは長い交渉の結果、相互に中距離核ミサイルを廃棄しただけでなく、ソ連自体が消滅したため、核の焦土化の前提が消えてしまったからです。

    それでも、ヨーロッパから核兵器は消えていません。北大西洋条約機構(NATO)もロシアも依然として抑止力として核は削減しても、維持しています。「核廃絶をめざす」と述べたオバマ米大統領のプラハ演説も「近い将来、それが実現するとは思わない」との留保がついていました。

    ヨーロッパに比べると、東アジアの安全保障状況はもっと原始的です。中国は自国の核は「自衛目的」であり、先制不使用と、非核兵器保有国に核兵器を使用しないこと、核兵器による威嚇を行わないことを約束していますが、その一方で中国は核兵器の近代化を進めており、東アジアには具体的な核軍縮交渉の枠組みは存在しません。

    1月25日付の朝日新聞朝刊3面の「中国軍解剖」シリーズ「南シナ海聖域化せよ」は現実に進行している中国の軍拡を赤裸々に描いています。21世紀のいま、熱戦が近い将来に起きると考えるのは非現実的かもしれませんが、軍事が外交や権益拡大の裏打ちになるという現実には変わりはありません。米欧日が経済危機に瀕し、基礎体力を失いつつあるいま、中国をどう見るか、そして日本がアジア太平洋地域で安全と平和そして私たちの基本的価値をどう守っていくかという大戦略を考える必要は日増しに大きくなっていきます。
     
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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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