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    「デモス」の恐怖 映画「アレクサンドリア」の寓意 - 2011.01.08 Sat

    3月5日に公開されるスペイン映画「アレクサンドリア」(2009)の試写を見てきました。ローマ帝国末期に伝説を残した実在の天文学者をヒロインにした物語で、ヒロイン・ヒュパティアを「ハムナプトラ」のレイチェル・ワイズが演じ、アカデミー外国語映画賞(2005)を受賞したチリ生まれのアレハンドロ・アメナーバルが監督した2時間余の大作です。広報資料にあった「彼女の運命を見届けた時、あなたは気づく。2011年の世界が、このアレクサンドリアにもあったことに――」というコピーがそのまま、胸に突き刺さってくる映画でした。

    ●ストーリーは――

    レイチェル・ワイズ 

    4世紀のエジプト、アレクサンドリア。ローマ帝国は崩壊寸前で、繁栄を極めたこの都市ににも混乱が迫りつつあった。その渦中、類まれなる美貌と明晰な頭脳を持った女性天文学者・ヒュパティア(レイチェル・ワイズ)は、分け隔てなく弟子たちを受け入れ、講義を行っていた。彼女は訴える。「世の中で何が起きようと、私たちは兄弟です」生徒でもあり、後にアレクサンドリアの長官となるオレステス(オスカー・アイザック)、そして奴隷ダオス(マックス・ミンゲラ)は密かにヒュパティアに想いを寄せる。やがて科学を否定するキリスト教徒たちと、それを拒絶する学者たちの間で激しい対立が勃発。戦いの最中キリスト教指導者は知る、この都市の有力者たちに多大な影響を与えているのはヒュパイディアだということに。そして攻撃の矛先は、彼女に向けられたのだった――(広報資料から)

    ●これは単なる史劇ではない

    キリスト教 

    古代アレクサンドリアの図書館を舞台に天才女性天文学者とその弟子たち、古代エジプトやギリシャ・ローマの神々を信ずる学者、キリスト教に救いを求めた貧しい民衆、ディアスポラのユダヤ教徒、そしてキリスト教を国教としたローマ帝国の権力が入り乱れて混乱に陥っていく物語です。アメナーバル監督の目標は「観客を”CNNの取材チームが、4世紀に起きたことをドキュメンタリーにしたものを見ている”気分にさせることだった」といいます。それはもののみごとに達成されているといってよいでしょう。私も暗い気持ちにさいなまれながら、手に汗を握りました。これは単なる「史劇」ではありません。むしろ近未来ドラマと理解した方がよいのです。

    ●時と空間を超える様々な寓意

    gods 

    見る人はこの映画から、さまざまな寓意を引き出すことができます。地動説に行き着くヒュパティアの推論は、科学への素朴なあこがれと畏敬をかきたててくれますしし、西欧の人々がいう「明晰だった古典古代から中世への暗転」を具体的に理解する手立てにもなります。そして、その暗転をもたらしたのが宗教だったことを知ります。”知”の象徴の図書館が、貧しい者に救済を与えるキリスト教によって破壊される様を信じられない人もいるでしょう。そこからバーミアンの大仏を破壊したアフガニスタンのタリバーンを連想する人もいるでしょうし、キリスト教への冒涜だと怒る人もいるでしょう。この映画の別のモチーフは、エリートと民衆の対立です。ここからは「民主」とは何か、「平等要求」とは何かという根源的な疑問がわいてきます。そのほか時代を超え、国や民族を超える意味を持ちうる映画だといえます。

    ●邦題「アレクサンドリア」は残念

    agora 

    原題は「アゴラ」です。「アゴラ」は古代ギリシャ語の「広場」。日本の中学生でも知っています。古代ギリシャのいかなる国家でも「民会」の開催場所を意味する、「デモクラシー=民主政」を象徴することばです。「知の滅亡」を伝える映画に「アゴラ」という名を与えたところにアメナーバル監督のメッセージがあったような気がするのですが、邦題の「アレクサンドリア」ではそれが伝わってこないのがいささか残念でした。




     
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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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