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    「暴力装置」 ”sengoku"ビデオから見えるもの(2) - 2010.11.23 Tue

    仙谷由人官房長官の「暴力装置」発言は、参議院予算委員会の3分半で国会の議事録上は決着しましたが、ネットを起点としたその後の余波で蒸し返されることになりました。

    ●マックス・ウェーバーが味方に?

    マックス・ウェーバー 

    最もgewaltig(強力です。暴力的とはいいません)だったのは「マックス・ウェーバー」です。マックス・ウェーバー流と称される「暴力装置」と日本左翼用語としての「暴力装置」、そしてそれぞれの用法に親しんできた世代と社会グループについては、(1)で書きましたので繰り返しませんが、「マックス・ウェーバー」を黄門さまの印籠よろしくふりかざした人々の影響か、国会では「マ」の字も出さずに謝罪した仙谷さんは、その後マックス・ウェーバーを持ち出しました。さらに、自民党の石破茂政調会長が、かつて「暴力装置」ということばを使ったという発見を持ち出す人が出てくるにいたって、俄然仙谷さんとその仲間たちは元気づきました。

    ●「石破茂は悪くないのか」との逆ギレ

    石破茂 

    これは昨年3月の朝日新聞の第7回朝日アジアフェロー・フォーラムで「国家の定義というのは、警察と軍隊という暴力装置を合法的に所有するというのが国家の1つの定義のはず」と述べたものです。学者や専門家の討議での発言です。国民に向けて政府の姿勢を説明する国会で、それも唐突に出たものとはわけが違います。石破さんの使い方は、まさに学者、研究者が是とする使い方です。私自身も石破さんのような使い方はしてきました。しかし、仙谷さんの使い方をこれとひとしなみに扱いには無理があります。

    ●石破さんの自戒

    とんでもない引き合いに出された石破さんは、11月19日付の自分のブログで「原典はマックス・ウェーバーの『職業としての政治』なのですが、外国語による著作を引用するときは、原文にあたらないと、訳語のニュアンスで誤解を招きかねないので、これからもっと私も注意しなくてはなりません(ウェーバーの著作には他にも「装置」という訳語が多く出てきます)」と自戒しています。一方、仙谷さんは22日の参院予算委で、自らの発言について、「適切を欠くものとして謝罪し、撤回したことを改めて申し上げたい。現代的には、自衛隊は実力組織あるいは実力部隊と言うべきところの言い間違いだった」と改めて発言を撤回し、謝罪しました。

    ●「暴力装置」という言葉の身元調査始まる

    「暴力装置ということばを使って何が悪い」という議論の一方で、「マックス・ウェーバーの意味することを『暴力装置』と翻訳したこと自体が間違っているのではないかという指摘がやはり学者、研究者から出てきました。ネット上での経過は@mnb_chiba さんの労作「暴力装置の語源や訳語をめぐって(1)」と「暴力装置の語源や訳語をめぐってpart2レーニン的起源と日本的文脈」に譲ります。

    ●ドイツ語のGewaltの意味

    Duden 

    私としては日本で「暴力」という訳語が与えられている「Gewalt」というドイツ語の理解そのものに誤りがあることを指摘するにとどめます。ドイツで社会生活をしているとGewaltということばには、けっこうお目にかかります。そのものずばり「暴力」という意味の時もありますが、日本語での絶対悪に近い「暴力」の意味内容とGewaltの意味内容はまったく同じではありません。DUDENでも、日本の大きな独和辞典でも、第1の意味は権力、支配力、制御力、第2が無法、暴力です。
    die richterliche(裁判官の)Gewaltは「司法権」ですし、DUDENには
    die göttliche Gewaltという熟語も出てきます。göttlicheは「神の」です。

    ●イケてる訳語だった暴力装置

    ドイツ語の達人ではありませんが、長年ドイツ語で食べてきた私には
    Gewaltを「暴力」と訳してしまうことこそ「暴力的」に思えます。しかし、翻訳されたころの時代精神、言語環境では、「暴力装置」は「イケてる」訳語だったのでしょう。そして、現在でも「イケてる」と感じている人がけっこう多いことがこの間のやっさもっさでわかりました。

    ●1人歩きしたカタカナの「ゲバルト」

    左卜全 

    一方、大学紛争の時代以降Gewaltはカタカナの「ゲバルト」として日常語になってしまいました。悲惨な「内ゲバ」から滑稽な「ゲバルト・ローザ」左卜全さんの「やめてケレ ゲバゲバ」(老人と子供のポルカ)まで。「Gewalt」は「暴力」として固定されました。「ゲバルトとはおれのことかとGewalt言い」のようなものです。

    ●「暴力装置は政治学の常識」かな?

    マックス・ウェーバーの意味することは、合法的な政府の意思を実行させる担保としての強制力ということのようです。もちろん、それはむき出しの暴力になることもあります。Gerwaltがカバーする意味内容の幅広さです。しかし、かつての左翼の用語のような「悪いやつら」という意味合いとはどういう関係にあるのでしょうか。ここまで書いたところで、友人が「『はてな』ブログ上の『名無しさんの弁明』が、神山茂夫起源説を唱えています。ヴェーバーじゃないことも併せて論じておられるようです」と教えてくれました。興味がありましたら、上のハイパーリンクをクリックしてみてください。「暴力装置はマックス・ウェーバーのことば。政治学の常識」という根拠も実は危ういかもしれません。

    ●2次情報で妄想を逞しくした人々

    それでは、こうした誤解、曲解がなぜ集中的に発生したのでしょうか。それは、ネット上の発信者たちが「仙谷さんの暴力装置発言」を知ったメディアが何だったのかによると私は考えます。「マックス・ウエーバー」や「石破茂さん」を持ち出した人の多くは2次情報によって知った人のようです。すでにテレビ・ニュースや新聞、インターネットニュースなど、マスコミがそれぞれの価値判断によって切り取り解釈した情報をもとに妄想を逞しくしてしまったといってよいと思います。

    ●現場にいた菅直人首相にはわかった「不適切」

    sengoku 菅直人 

    カギは(1)で書いたように、失言から謝罪まで3分半という短い起承転結にあります。現場にいた人、あるいはテレビ中継を見ていた人は当事者の仙谷さんが謝罪したことで、事柄を理解しました。つまり「不適切」だったのです。それは、現場にいて一部始終を目撃した菅直人首相があっさり謝ったことでも、わかろうというものです。

    「暴力装置発言」は実に多面的な政治、社会、心理現象でした。実に興味深いものでしたが、「マックス・ウェーバー」を振り回した人たちには、あまり勉強にならなかったようですね。
     




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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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