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    社説を読もう 尖閣ビデオ問題 - 2010.11.09 Tue

     尖閣諸島をめぐる中国と日本の角逐は、その影響をますます広げています。さまざまな要素が複雑にからみあっています。「尖閣ビデオ」の流出についても「けしからん論」と「よくやった論」が飛び交い、どれが正しいかよくわからない人が多い思います。

    空から見た  
    空から見た尖閣諸島 Wikipedia

    ●社説はむずかしくない

    こうしたとき、やはり頼りになるのは、いまや衰退していくメディアといわれる新聞です。それも社説です。「小むずかしいことが書いてあるんでしょ」「社説には写真もイラストもないし、とっつきにくい」と敬遠する人が多いようですが、最近の社説は、どの新聞社も読んでもらうために精一杯わかりやすく書く努力をしています。

    ●インターネットを使って、社説を比較しよう

    複数の新聞をとっている方は少ないと思います。1紙だけだと、お決まりの論調にうんざりということになりますが、そこはインターネット時代のすばらしさ。各新聞社のHPでは社説はタダで見られますし、1週間ぐらいさかのぼって読めます。社説を集めてくれるサイトもあります。かくいう私も全紙講読しているわけではありませんので、必要に応じてHPを利用します。

    社説集め 
    社説を集めてくれるサイトの画面

    ●見出しを比べると

    試みに、「尖閣ビデオ」流出が大きなニュースになった11月6日付の各紙社説を比較してみましょう。まず見出しからです。
    「尖閣ビデオ流出―冷徹、慎重に対処せよ」(朝日)
    「尖閣ビデオ流出 一般公開避けた政府の責任だ」(読売)
    「尖閣ビデオ流出 統治能力の欠如を憂う」(毎日)
    「迫られる尖閣ビデオの全面公開」(日経)
    「尖閣ビデオ流出 政府の対中弱腰が元凶だ」(産経)
    比べてみれば、各紙のそれぞれに姿勢がわかりますし、いまの論点が何かがわかります。本文を比べてみましょう。

    ●論点は2つ

    大づかみにいうと、論点は
    1)「流出」という事態の評価と扱い
    2)尖閣ビデオは公開すべきものか
    の2つです。

    みずき
    尖閣ビデオの画面

    ●「流出」は正義という見方に歯止め

    「流出」という事態については、「流出源の解明、処罰が必要」という点で5紙は一致しています。日本には機密保持法はありませんが、公務員が流出させたとすれば、国家公務員法100条(守秘義務)の違反ですから、立派な犯罪です。世間には、流出させた人を「正義の味方視」する傾向が少なくありませんが、仮にも「社会の公器」たる新聞、それも社説がそれに習うわけにはいきませんし、「公務員の守秘義務」は民主主義社会を成り立たせる重要な要素です。俗論に人々が傾かないようにする歯止めを社説は果たしています。

    ●産経は政府の意図に疑問

    一方、この段階で政府は、6日付の私のブログ「権利の上に眠るもの 尖閣ビデオ流出に思う」で指摘したように、「流出」に関心を集中し、ビデオが衝突事件の実像を全世界に明らかにしたという新しい状況の上に立つ尖閣諸島領有権問題への対策がまったくといっていいほど示しませんでした。その中で、「情報漏洩(ろうえい)の「犯人捜し」と組織改革に国民の目をそらそうという意図が透けてみえる」という産経の指摘が目を引きます。

    首相官邸 
    総理大臣官邸

    ●「公開」「非公開」で分かれる主張

    次に「公開」か「非公開」かという論点です。
    6日付朝刊の段階では、
    「公開派」   読売、日経、産経
    「公開慎重派」 朝日
    「判断回避」  毎日
    と各紙の主張はわかれました。


    ●ビデオに秘匿の理由はないという主張

    読売は「船長の釈放で捜査が事実上終結した今となっては、公開を控える理由にはならない」といいます。産経は「国会での部分公開は菅直人政権が、国民の『知る権利』を無視した」ものだと述べ、「非公開」は民主主義に反すると主張します。ビデオ公開について、政府は刑事訴訟法を根拠に、「刑事事件の証拠であるビデオは公開できない」と非公開を正当化してきましたが、これについて日経は、公開できないという刑訴法の規定の趣旨は「最高裁判例によれば(1)裁判に不当な影響を与えない(2)事件関係者の名誉を傷つけないーーの2点にある」と反論、「中国人船長がすでに帰国した現在、証拠ビデオを公開しても同規定の趣旨には反しない」と主張します。産経は「弁護士でもある仙谷長官が、中国をアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に参加させようと、故意に条文の解釈をねじ曲げた」と激しく非難します。

    sengoku 
    仙谷由人官房長官

    ●「公開は公益」かで分かれる各紙

    「公開派」の社説は、さまざまな論拠から、「公開が公益である」と主張しています。これに対して、朝日は「公開は公益」という考え方に疑問を呈します。朝日の主張の前提は「ビデオは単なる捜査資料でなく、日中外交や内政の行方を左右しかねない高度に政治的な案件である」というところにあります。そして、「外交や防衛、事件捜査など特定分野では、当面秘匿することがやむをえない情報がある」として公開には慎重な態度をみせます。もちろん、朝日も「政府が持つ情報は国民共有の財産であり、できる限り公開されるべきものである」と前置きする複雑な論法ですが、この辺のところが、「朝日はむずかしい」といわれる所以かもしれません。

    ●すべてが明らかにされるべきか?

    19世紀からマスメディアを通じて発達してきたジャーナリズムは「すべてが明らかにされることが公益である」という認識を基礎です。熾烈な「特ダネ競争」はここに存在理由があります。しかし、社会が発達するにつれ、公開が好ましくない種類の情報があることがわかったことも事実です。暴露ジャーナリズムから「プライバシーの権利」を保護するのは、もはや常識になりました。

    GeorgeWashington 
    横須賀に入港した米原子力空母ジョージワシントン

    ●秘匿が妥当という判断はだれが?

    「すべてが明らかにされることが公益である」とは限らないのです。では、今回のビデオのようなケースはどうでしょうか?「プライバシーの権利」ではなく、朝日のいうように「高度に政治的な案件」です。問題になるのは「高度に政治的な案件であるという認定と、その扱いがだれに委ねられるか」です。場合によっては、恣意的あるいは党派的な判断に任されることになりかねません。最近問題になった佐藤栄作政権による「日米核密約」についても「当面秘匿することがやむをえない情報」ではなかったかを考えなければならないでしょう。

    朝日は「公開反対」ではありません。「公開に慎重であれ」というかたちで国民の熟考をうながしています。断片的な情報を投げつける他のメディアと違い、新聞の社説は、さまざまな要素を多面的に考えさせてくれます









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     はぎたに じゅん

    Author: はぎたに じゅん
    TVコメンテーター
    法政大学法学部教授
    元朝日新聞編集委員
     政治記者、カイロ、ウィーン
     ボン特派員などを歴任
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